写真提供:HAN環境・建築設計事務所

「日本の住宅性能は先進国では最低レベルだ」と聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。欧州では、新築住宅で結露が起こると施工者が責任を問われるといいます。「結露は発生するもの」…と、当然のように思っていた住宅の不便は、実は性能に気をつければ解消されるものなのです。ここでは、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が、「性能にこだわった住まいづくり」に必要な知識を紹介・解説していきます。

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実は…日本の住宅断熱性能は先進国で断トツ最低レベル

専門家の中では常識なのに、一般の方々はあまり知らない…ということはいろいろありますが、「日本の住宅は先進国の中で断トツに性能が低い」という事実もその一つです。

 

多くの日本人は、我が国の住宅の性能は、先進国の中でも優れていると思っているようです。ところが実は、先進国はおろか、今や中国や韓国よりも大幅に性能が劣っているのです。その結果として、冷暖房光熱費を無駄にしており、多くの方々が健康を害し、快適な暮らしを送ることができなくなっています。

 

あまり知られていない驚くような事実が、日本の住宅業界には多くあります。知らないまままで家を建てるのと、知った上で建てるのでは、人生の質までガラリと変わってきてしまいます。

 

日本は物質的には充足しており、もはや新たに欲しいものはない、という声も耳にします。ですが、こと住宅については、質の面で全く充足していません。

 

ただ、多くの消費者は「住宅って、そんなものなのだろう」と思っているだけなのです。

 

◇日本だけ「省エネ基準への適合」が義務化されていない

 

日本の住宅性能に関わる制度は、2つの面から遅れています。

 

まず1つは「省エネ性能」です。

 

先進国は、住宅の断熱性能や省エネ性能について、基準を定めています。特に欧州各国は、近年、住宅の省エネ性能を高める施策に力を入れています。概ね3~5年ごとに省エネ基準が改正され、どんどん厳しくなっていっています。[図表1]は、ドイツの省エネ基準強化の推移に日本の現行基準のレベルを表記したものです。

 

出典:一般社団法人日本エネルギーパス協会
[図表1]ドイツの省エネ基準強化の推移と日本の現行基準 出典:一般社団法人日本エネルギーパス協会

 

図を見ていただければわかる通り、我が国の省エネ基準は、ドイツの1984年と1995年の基準の間ぐらいのレベルにとどまっています。実質的には、平成11年基準といわれる20年以上も前に定められた基準のままです。

 

その後省エネ基準の改正は何度か行われ、計算のロジック等は変化してきていますが、住宅に要求される断熱性のレベルはほとんど変わっていません。

次ページ20年以上前にできた「“次世代”省エネ基準」が今でも…

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