精神科医がスキルを向上させる「地道な取り組み」
仮に、自分でボトルネックを解消できるスキルがなくても、こうした振り分け能力がある精神科医であれば、目の前の患者のために適切な医師やカウンセラーを紹介することで間接的な援助が可能になります。
では精神科医は、どうすれば対人援助スキルを向上させることができるのでしょうか。
「こうすればOK」という明確な答えはなく、工場での生産性向上を目指す地道な取り組みと大きく変わるものではないと思っています。
工場全体を照らすことができなくても、可能な限りの広範囲を照らせるようフレームを増やす努力を重ねながら真摯な姿勢でボトルネックを探し、そのボトルネックを解消すべく介入を行います。
そしてそれが本当にボトルネックであったのか、その介入の方法が適切だったかについて、あとから一つひとつを検証する作業を繰り返すしかないのです。
それを日々、臨床の場で積み重ねていくなかでそのスキルは向上し、少しずつ照らす範囲が広がり、ボトルネックとなる所見を感知できるようになってきます。
小椋 哲
医療法人瑞枝会クリニック 院長