(※写真はイメージです/PIXTA)

会計を嫌う・苦手とする社長には「お金の使い方」に共通点があります。利益を生み出しているかどうか判然としない無駄遣いを繰り返すばかりか、多額の使途不明金の発生もあります。会計の管理の悪さを放置した結果、社内で不正が行われている可能性もあり、十分な注意が必要です。会計につまづきがちな経営者の問題点について、中小企業の実情を知り抜く税理士・公認会計士がズバリ解説します。

会計嫌いの社長が持つ「極端な考え方」とは?

借金は「常に慎重」であるべきだが…

企業経営にとって大切なことの一つが、「借金」との付き合い方です。

 

金融機関から融資を受けることで、事業の成長を加速させたり、厳しい資金繰りを乗り越えたりすることができます。しかし、言うまでもないことですが、借りたお金は返さなくてはいけません。借金には慎重である必要があります。

 

ところが、会計嫌いの社長は、極端な考え方を持っています。

 

「とにかく借りられるだけ借りておこう」

「借金は怖いから無借金を続けよう」

 

この2つの考えは、どちらも問題です。

 

「目的なく目いっぱい借りる」方針が、会社を追い込んでいく

まず、「借りられるだけ借金をする」という意見について考えてみます。

 

借金を重ねるということは、その元本の返済はもちろん、借入期間に応じた金利を負担しなくてはいけません。例えば1000万円の融資を、年利3%、期間5年で借り入れたとすると、150万円以上の金利を負担することになります。

 

融資を受けるのであれば、こうした金利負担をあらかじめ考え、負担に見合った効果があるのかを考える必要があります。

 

そもそも、融資を使うのであれば、あらかじめ目的がなくてはいけません。会社の運転資金に使うのか、設備投資に使うのか、ケース・バイ・ケースですが、具体的な目的もないのに融資を受けるべきではないと思います。

 

必要以上に融資を受けるのは危険なのです。人の心理として、手元に余分なお金があると、つい無駄遣いをしてしまうものですから、ゆくゆくは会社の首を絞めてしまいます。

 

もっとも、「銀行から『借り換え』を受けられるうちは、心配ない」という意見もあるかもしれません。昨今は多くの銀行が積極的に融資を行っているので、借り換えをしやすいのは確かです。つまり、新しい借金で、古い借金を返していくことができます。

 

しかし、こうしたやり方は、金融機関に会社の命運を預けるのと同じです。金融機関が融資をしてくれているあいだはいいですが、突然方針が変わるかもしれません。

 

例えば、2020年はコロナ禍を受けて政府が中小企業の借金に対して手厚く保証をしたことで、借金がしやすい状況が続いていました。これにより生き延びた中小企業は少なくありません。

 

ところが2021年に入り、宿泊業を中心に融資を断られるケースが増えてきました。このような方針変換があると、銀行の融資頼みの会社は、経営を続けることは不可能です。

 

無借金経営に固執することで、ビジネスチャンスがフイに

一方、「とにかく無借金を貫く」という姿勢も問題があります。

 

必要な資金があればこそ、つかめるチャンスもあるからです。

 

例えば、「競合に売上を奪われているので、設備投資が必要、でも必要なお金がない」という場面をイメージしてください。このときに無借金にこだわっていたら、必要なお金が貯まるまで、設備投資を行うことができません。貯まるまでの間に、ますます競合と差をつけられてしまいます。

 

「無借金経営」というとトヨタ自動車が有名ですが、ああいった経営が可能なのは、社がしっかりと利益を上げ、潤沢な資金を持っているからです。中小企業が同じような経営をするわけにはいきません。

 

借金は多すぎても、少なすぎても、問題だと考えてください。

 

自社にとって借り入れるべき金額はいくらなのか、いつ借り入れるべきなのか、正しい判断を行うには、やはり会計が必要です。

 

 

小形 剛央
税理士法人小形会計事務所 所長
株式会社サウンドパートナーズ 代表
税理士・公認会計士

本記事は『たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学

たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学

小形 剛央

幻冬舎MC

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