(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業の経営者に不可欠な「会計」の知識とセンス。しかし実際には、多くの社長が会計を苦手とし、敬遠しています。なぜでしょうか? 多数の企業経営者のサポートを通じ、中小企業の実情を知り抜く税理士・公認会計士が、会計学を知ることのメリットと、そこから広がる収益拡大の可能性について、明快に解説していきます。

一つの数字や状況だけ切り取って判断するのは…

「突然ですが、あなたの会社はうまくいっていますか?」と聞かれた場合、「まあまあうまくいっています」と答える人も、「あまりうまくいっていません」と答える人もいると思います。

 

でも、「どうしてそう思いますか?」と聞かれると、即答できない人は多いと思います。それらしい理由を考え出せたとしても、会計に照らすと疑問符がつくはずです。

 

「今月は売上高100万円を突破したから、うまくいっている」

 

→ その売上高を得るためにかかったコストはいくらでしたか? 最終的に利益を生まなければうまくいっているとはいえません。

 

「最新設備がそろっているから、うまくいっている」

 

→ 最新設備を買うだけでは意味がありません。稼働状況や利益への影響まで確認する必要があります。

 

「借金を多く抱えているから、うまくいっていない」

 

→ 借金があるイコール業績が悪い、というわけではありません。会社の資産や業績に見合った借金であり、その後の事業成長が見込めるのであれば、「うまくいっている」といえます。

 

このように、会社経営にはさまざまな数字が関係するので、一つの数値や状況だけを切り取って、「うまくいっている」「うまくいっていない」と言い切れるものではありません。売上高がきちんと上がっていることはもちろん、コストや資金繰りなど、会計の全体像を見ることで、初めて判断することができます。

 

そして、「特定の時点」だけを見て判断するのも問題です。

 

例えば、会社に資金がたくさんあっても、その直後にまとまったお金を支払う予定があって資金ショート目前なら、危険です。

 

決算書のなかには、「ある時点のお金の状態」を示すものだけでなく、「一定期間のお金の動き」を示すものもあります。これらを両方見ることで、初めて「本当にうまくいっているのか」という質問に答えることができるのです。

会計を見れば「やめるべき取引」も明確になる

社長が、「会社がうまくいっているかどうか」を正確に把握しなければ、経営は極めて不安定になります。目隠しをしながらレースに挑んでいるようなものですから、一生懸命走っているのに、気づけばゴールから遠ざかっているようなこともあります。

 

中小企業では、まったく利益につながらない取引を漫然と続けているケースが見られますが、このような事態も会計を見ていないから起きてしまいます。その取引を続けるほど、コストがかさんで損をするのに、従業員は一生懸命働いているのです。社長も、「お得意様だから、きちんと対応するように」と指示をする始末です。

 

会計をしっかり見ていれば、そのような取引は即刻やめるべきだと分かります。社長であれば、利益にならない取引はやめさせて、より見込みのある事業に注力させるべきです。

 

私は、「うまくいっていない」ということではなく、「うまくいっていないことが分からない」ことが問題だと考えています。

 

身体であれば、痛みを感じる機能が備わっています。ですから、痛みがあれば自然と病院に行くなどして治療をするものです。しかし、もし痛みを感じなければ、いつもどおりの生活を続けてしまい、いずれ限界がきて身体が動かなくなります。

 

会社も同じです。問題を抱えているにもかかわらず、気づけずに放置をしていると、いずれ事業を続けるためのお金がなくなり、会社に残るのは返すあてもない借金だけになってしまいます。

 

 

小形 剛央
税理士法人小形会計事務所 所長
株式会社サウンドパートナーズ 代表
税理士・公認会計士

 

 

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本記事は『たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学

たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学

小形 剛央

幻冬舎MC

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