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結果の詳細:雇用維持政策の終了後も雇用データは悪化せず
まず、失業保険申請件数と同じく11月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は21年9-11月の平均で121.9万件となり5か月連続で調査開始後の最高記録を更新した[図表3]。ただし、11月単月では122.7万件と10月(130.7万件)を下回った※。
※ 単月データは未季節調整値であり、例年10月は求人が多い季節性がある点に留意。なお、3か月平均のデータは季節調整値。
給与所得者データ※では、11月の給与所得者が2943.2万人となり10月から25.7万人増えた[図表4]。産業別に見ると、11月は居住・飲食や事務サービス業の増加が顕著で、最近は同様の傾向が続いている。月あたり給与額(中央値)については前年同月比4.7%で10月(5.1%)からは減速したが、引き続き高めの伸び率を維持している[図表4・5]。
※ 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
次に10月までのデータ(労働力調査)では、8-10月期の失業率が4.2%まで低下した[前掲図表1]。前月比では就業者および失業者が減少する一方で非労働力が増加した。コロナ禍前(19年12月-20年2月)と比較すると、就業者は56.7万人少なく、失業者は5.9万人多く、非労働力人口が63.7万人多い状況であり、いずれもコロナ禍前の水準までは回復していない。
労働参加率は63.3%であり、コロナ禍前(64.4%)から約1%ポイント低い状況にある。労働時間は31.5時間(前年同期差+2.1時間)、フルタイム労働者で36.0時間(同+1.9時間)となり、こちらもコロナ禍前の水準には届かず、横ばい圏での推移となった[前掲図表2]。
労働力調査が対象とした8-10月はコロナ禍からの回復が進んだ時期であるものの、就業者や労働時間がコロナ禍前の水準に戻る前に改善ペースが鈍化したことになる。
8-10月の平均賃金は前年同期比4.9%(実質は1.7%)とベース効果の剥落に伴い減速傾向にある。コロナ禍の影響を除くために2年前比で見ると、名目値が7.7%と7%を超える伸びを続ける一方、実質値は3.7%となり、インフレ率が高いことが影響し3%台まで減速している[図表5]。
最後に週次データを確認すると[図表6]、10月は失業者がやや低下する一方、非労働力人口や休業者はほぼ横ばいでの推移となった。政府の雇用維持政策が9月末で終了したため、10月の統計に注目が集まっていたが、雇用環境は特段の悪化を見せず安定した結果だったと言えるだろう。
高山 武士
ニッセイ基礎研究所
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