2022年の米国ハイ・イールド債券
マイナスの実質金利は高債務企業に有利
2022年も「利回り追求」の中、米国ハイ・イールド債券は「債券市場の投資家にとって外せない資産」であり続けると筆者は考えています。
インフレで利上げ期待は高まるものの、実際の利上げは緩慢で、実質金利がマイナスである面は、債務の大きい企業にとって有利な局面です。
【図表5】をぱっとご覧ください。すると【青色のライン】と【オレンジ色のライン】の連動が確認いただけると思います。
【青色】は、米国ハイ・イールド債券の信用スプレッド、国債上乗せ金利です。一方で【オレンジ色】は、アメリカのインフレ率ですが、「右軸・逆目盛」で見ています。すなわち、インフレ率が高い局面は、米国ハイ・イールド債券市場に資金が流入し、信用スプレッドが縮小しています。
インフレの局面は、お金の借り手にとって有利で、現在のように、インフレ率が高く、しかもまだまだ低金利政策が続く面では、企業のデフォルト率は低いままと考えられます。実際、大手格付け会社のムーディーズ社による最新レポートによると、2021年10月のデフォルト率(過去12ヵ月)は2.14%であり、2015年以来の低水準です。また、2022年の前半には1.6-1.8%付近で安定した後、2022年の後半の終わりには2.2%程度まで上昇すると見込まれています。
ボラティリティが相対的に低い
米国ハイ・イールド債券は、変動性が相対的に低い資産です。
【図表6】は、米国株式、先進国高配当株式、米国ハイ・イールド債券の月次リターンの分布図を見たものです。
【図の真ん中のグループ】を見ると、【青色】の米国ハイ・イールド債券は「全体の89%のサンプルで月次リターンがマイナス4%からプラス3%に収まっています」。
次に、【図の左側のグループ】を見ると、【青色】の米国ハイ・イールド債券は「月次リターンがマイナス4%より悪かった月が全体の2%しかありません」。これは年に換算すると「3年に1度程度起きる頻度」です。対して、【緑色】の米国株式や【オレンジ色】の先進国高配当株式では「約1年に1度は起きる程度」です。
米国ハイ・イールド債券は、標準的なリスク資産の中では「怖い思い」をする頻度が相対的に低い資産クラスと言えるでしょう。
インフレもあり、金融環境の正常化もあり、おそらく2022年は2021年よりも変動性が高くなると思われます。どんな状況が生じても過ごせるような「全天候型のポートフォリオ」を作るために、米国ハイ・イールド債券は効果的な資産であると筆者は考えています。