2022年の米国リート
インフレ時に良好
筆者は約1年前から「インフレの見通し」と「インフレ時のリートの良好さ」についてお伝えしてきました。インフレは2022年も高止まりすると考えています。また、長期的に考えると、2020年代は、環境対策、格差是正、米中ブロック経済化、政府債務の更なるマネタイゼーションなどによって、インフレ率は高止まりする可能性があります。
【図表1】は、米国の3ヵ月インフレ率が年率3%以上であったときの様々な資産のリターン(平均値)を取っています。米国リートのパフォーマンスが相対的に良好であることが確認できます。
リートはインカムがある実物資産。変動性も相対的に低い
一般に、インフレの局面は実物資産が優位です。実物資産と言えば、資源やゴールドなどの商品が挙げられますが、これらにはインカム(金利や配当)がありません。インカムがない資産は、米国を含む各国の利上げ観測の高まりによって軟調になる恐れがあります。
特に、ゴールドは「現預金の代替」として保有されている可能性が高いと見られますが、【図表2】にも示すとおり、概して、(利上げ期待で上昇する)2年金利と逆相関の関係にあります。2年金利は現状0.6%台半ばですが、利上げ見通しに沿ってやがては1.5%程度まで上昇する可能性があります。
一方、原油や銅はインカムがなくとも、利上げの背景である景気の力強さによって良好になる可能性もあります。しかしながら、これらの資産は【図表3】にも示すとおり、ボラティリティ・変動性が高いため、一般的な個人投資家のポートフォリオを考えると、多くの割合を振り向けることは困難でしょう。
金利上昇に耐性。インカムもインフレ分を補償
2022年には、①米国で利上げが見込まれます。また、②インフレが長期金利を押し上げる可能性も考えられます。確かに、米国リートも利上げや金利上昇の悪影響を完全には免れません。
しかし、①米国リートの多くはパンデミックを受けた低金利を利用して、負債の長期化を進めており、短期金利の上昇による業績への悪影響は限定的と見られます。
また、②過去を見ると、米国リートの1株当たり配当は概ねインフレ率並みに増えています。すなわち、金利上昇や利上げの大きな背景はインフレであるわけですが、(元本である現物不動産に加えて)賃料やキャッシュフローもインフレ分の補償を受けることが期待されるということです。
米国リートは、実物資産の中でも、
②インカムがインフレで補償されることが期待され、
③ボラティリティが相対的に低く、
④しかも流動性も高い
ため、一般的な個人投資家のポートフォリオにおける中核資産と筆者は考えています。