通常、マンションの名称にはほとんど地名や駅名が使われます。しかし、ごくたまに地名も駅名もまったく使われていない、名称だけでは「どこに建っているのかわからない」マンションがあると、住宅ジャーナリストの榊淳司氏はいいます。地名・駅名がマンションの名前に使われない「嫌われている街」のランキングをみていきましょう。

駅や地名から想像する「街のイメージ」が重要

次にいよいよワースト5位から1位を発表しよう。

 

【1位】信濃町(中央線)/2物件

【2位】新大塚(丸ノ内線)/3物件

【2位】大門(浅草線)/3物件

【4位】新大久保(山手線)/4物件

【4位】江戸川橋(有楽町線)/4物件

 

ある程度予想はできたが、ここまでとは思わなかったのが中央線の「信濃町」だ。宗教団体の建物群があることで有名だが、マンションデベロッパーにとってはマイナスイメージなのかもしれない。

 

「新大塚」もなぜか好かれない名称だ。「大門」は山手線の「浜松町」駅に近いのが災いしたのか、わずかに3物件。「新大久保」はある程度仕方がないような気がする。ネーミングの段階で「新宿北」となりやすいのだろう。

 

有楽町線の「江戸川橋」も嫌われたものだ。周辺の分譲マンションには「文京○○」と、文京区内であることを強調しているケースが多い。

 

参考までに12位以下になった4つも挙げておきたい。

 

【12位】巣鴨(山手線)/20物件

【13位】田端(山手線)/21物件

【14位】大塚(山手線)/25物件

【15位】日暮里(山手線)/34物件

 

これらの駅名は山手線ゲームをやると、最後のほうで出てきそうな名称だ。ただ「大塚」や「日暮里」はさほどマンションデベロッパーには嫌われていないのが、やや意外だった。そこはやはり山手線の力だろうか。

 

いずれにせよ、駅や地名から想像する街のイメージに、マンションデベロッパーは神経を尖(とが)らせていることがわかった。ただ、そのこだわりが強すぎるあまり、かえって滑稽(こっけい)にしか思えないマンション名を生み出したりもする。

 

2050年になって、こういった流れは変わるのだろうか。1990年と今とを比べても、各駅のイメージが劇的に変化したということはない。

 

同じように、長い年月をかけて形成された街の特色が30年や50年で大きく変化する、というようなことは、よほどのことがないと起きないのではないだろうか。

 

 

榊 淳司
住宅ジャーナリスト
 

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※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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