私募リートで注意したい「関係者の利益相反」リスクとは？

投資法人とスポンサーの結びつきは強い

前回の続きです。

④投資法人の関係者・仕組みに関するリスク

リートにかかわる関係者や法的な仕組みに由来するリスクです。とりわけ、利益相反に関するリスクは注意を要します。

（1）スポンサーへの依存、利益相反に関するリスク

投資法人及び資産運用会社は、通常、スポンサーと密接な関係を有しています。そのため、投資法人による安定した収益の確保と成長性に対するスポンサーの影響は非常に大きなものとなっています。したがって、投資法人及び資産運用会社が、何らかの理由により、スポンサーとの円満な関係を維持できなくなった場合には、投資法人に悪影響がもたらされる可能性があります。

また、スポンサーの利益が投資法人やまたは投資法人の他の投資主の利益と異なる場合、利益相反の問題が生じる可能性があります。すなわち、スポンサーは、投資法人がスポンサーまたはその関連会社から資産を取得し、または物件の賃貸もしくはその他の業務を行う場合に、投資法人に対して影響力を行使する可能性があり、また、投資法人がスポンサーまたはその関連会社と資産の取得等に関して直接競合した場合には、投資法人に影響力を行使する可能性があります。そのような場合、投資法人の業務、財政状態または経営成績に悪影響がもたらされるおそれがあります。

（2）投資法人の関係者への依存、利益相反に関するリスク

投資法人は、資産の運用を資産運用会社に、資産の保管を資産保管会社に、一般事務を一般事務受託者に、それぞれ委託しています。そのため、投資法人が業務遂行を円滑に行っていく上ではこれらの者の能力、経験及び知見に依存するところが大きくなります。そのため、これらの者が業務遂行に必要な人的・財政的基盤等を維持できない場合には、投資法人の運営に悪影響がもたらされるおそれがあります。

また、投信法は、投資法人の執行役員、監督役員など投資法人の関係者に関する義務と責任を定めています。これらの投資法人の関係者が投信法その他の法令に反する、法定の措置をとらないといったときは、投資主に損害が発生する可能性があります。

また、資産運用会社、資産保管会社、一般事務受託者が、法令上または契約上負っている善良な管理者としての注意義務（善管注意義務）、投資法人のために忠実に職務を遂行する義務（忠実義務）、利益相反状況にある場合に投資法人の利益を害してはならない義務などに違反した場合にも、投資法人の存続及び収益等に悪影響を及ぼし、投資主が損害を受ける可能性があります。

（3）投資法人の投資方針等の変更に関するリスク

投資法人の規約に記載されている資産運用の対象や方針等の基本的な事項の変更には、原則として投資主総会の承認が必要になります。もっとも、他方で、投資法人の役員会や資産運用会社の取締役会が定めたより詳細な投資方針等については、投資主総会の承認を経ることなく、変更することが可能です。そのため、投資法人の投資主の意思が反映されないまま、これらが変更される可能性があります。

投資法人そのものがなくなってしまうリスクも存在

（4）投資法人の登録取消リスク

投資法人は、資産の運用を行うために投信法に基づき投資法人としての登録を受けますが、一定の事由が発生した場合、登録を取り消される可能性があります。登録が取り消されると、投資法人は解散することとなります。投資法人が解散し、清算する場合には、投資主は、当初の投資金額の回収を期待できない可能性があります。

（5）投資法人の倒産リスク

投資法人は、一般の法人と同様に、その資産を超える負債を有する状態となる可能性があります。投資法人は現行法上の倒産手続として破産法上の破産手続、民事再生法上の再生手続及び投信法上の特別清算手続に服します。投資法人につき、これらの倒産手続を回避するための特別の制度や保証はありません。投資法人におけるこれらの法的倒産手続により、投資主が損害を受ける可能性があります。