前回は、私募リートの投資対象が「一定地域に偏在する」場合等のリスクを紹介しました。今回は、私募リートの投資対象が「転貸」された場合のリスクを見ていきます。

様々なトラブルの種になる不動産の「転貸」

(18)転貸に関するリスク

(ア)転借人に関するリスク

投資法人は、保有する不動産等の全部または一部を転貸させる権限を与えた上で賃借人に一括して賃貸することがあります。このように、賃借人に不動産等の全部または一部を転貸させる権限を与えた場合、投資法人は、不動産等に入居するテナントを自己の意思により選択できなくなったり、退去させられなくなったりする可能性があります。

 

また、賃借人の賃料が転借人から賃借人に対する賃料に連動する場合、転借人の信用状態等が、投資法人の収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(イ)敷金等の返還義務に関するリスク

賃貸借契約が合意解約された場合など一定の場合には、賃貸人が転貸人の地位を承継し、転貸人の転借人に対する敷金等の返還義務が賃貸人に承継される可能性があります。

テナントが勝手に賃貸権等を譲渡するケースも

(19)マスターリースに関するリスク

投資対象となる不動産等において、PM会社が不動産等の所有者である投資法人や信託受託者との間でマスターリース契約を締結してマスターリース会社となり、その上でエンドテナントに対して転貸する場合があります。

 

投資法人や信託受託者がマスターリース契約を締結する場合、マスターリース会社の財務状態の悪化により、マスターリース会社の債権者がマスターリース会社のエンドテナントに対する賃料債権を差し押さえる等により、マスターリース会社から賃貸人である投資法人や信託受託者への賃料の支払いが滞る可能性があります。

 

(20)テナント等による不動産の使用に基づく価値減損に関するリスク

投資法人は、テナントの属性や資力を勘案の上、賃貸借契約を締結するか否かを決定し、また、締結後も、PM会社を通じてその利用状況を管理していきます。

 

しかし、個々のテナントの利用状況をつぶさに監督できるとの保証はなく、投資法人の承諾なしにテナントによる転貸借や賃借権の譲渡がなされるおそれもあります。また、一部のテナントの属性や一定の反社会的勢力が賃貸人の承諾なくして建物の一部を占拠する場合などには、不動産が全体として悪影響を受けることがあります。

本連載は、2016年1月25日刊行の書籍『世界一わかりやすい私募REITの教科書』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい私募REITの教科書

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初村 美宏

幻冬舎メディアコンサルティング

取引所に上場せず、オープンエンドで運用される不動産投資ファンド「私募REIT」。 1990年代にアメリカで人気となり日本でも2001年から発売が開始、不動産投資市場でも急成長を遂げている人気の投資商品である。主な投資者は機…

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