前回は、私募リートの投資対象が「開発物件」等の場合のリスクについて説明しました。今回は、投資対象が「一定地域に偏在する」場合等のリスクについて見ていきます。

温室効果ガス排出等にかかる法令にも留意

(14)地球温暖化対策に関するリスク

法律や条例により、地球温暖化対策として、一定の不動産の所有者に温室効果ガス排出に関する報告や排出量制限の義務が課されることがあります。これらの制度設計または拡充に伴い、排出量削減のための建物改修工事を実施する、排出権あるいは再エネクレジットなどを取得する等の負担を余儀なくされる可能性があります。

 

(15)不動産の所有者責任に関するリスク

建物を含む土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり、そのために第三者に損害を与えた場合には、第一次的にはその占有者、そしてその占有者が損害の発生を防止するに必要な注意を行っていた場合には、その所有者が損害の賠償義務を負うことになります。しかも、民法上、この所有者の義務は無過失責任とされています。

 

したがって、投資法人の不動産の設置または保存に瑕疵があり、それを原因として、第三者に損害を与えた場合には、直接または不動産信託受託者を通じて間接的に、投資法人が損害賠償義務を負担するおそれがあります。

テナント集中などもリスク要因に

(16)不動産の偏在に関するリスク

地域、特に首都圏に偏在するおそれがあります。したがって、一定地域における収益環境等の変化が投資法人の収益に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

さらに、投資法人の運用資産が近接して所在する場合には、相互に競合し、その結果、投資法人の収益に悪影響を与えるおそれがあります。

 

(17)テナント集中に関するリスク

不動産が単独または少数のテナントに賃貸される場合には、テナントの資力、退去、利用状況等により、不動産の収益が大きく影響を受けるおそれがあります。

 

また、テナントが賃料の支払能力を失った場合や賃料の減額を要求する場合には、収益が大きく圧迫されます。

本連載は、2016年1月25日刊行の書籍『世界一わかりやすい私募REITの教科書』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい私募REITの教科書

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初村 美宏

幻冬舎メディアコンサルティング

取引所に上場せず、オープンエンドで運用される不動産投資ファンド「私募REIT」。 1990年代にアメリカで人気となり日本でも2001年から発売が開始、不動産投資市場でも急成長を遂げている人気の投資商品である。主な投資者は機…

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