運用方針によって具体的なリスクは異なってくる
前回の続きです。
②投資法人の運用方針に関するリスク
リートはそれぞれ独自の運用方針をもっています。そのため、その運用方針に特有のリスクをもつことになります。
たとえば、物流施設に特化する運用方針をもっている場合であれば、運用資産の周辺の市街地化により、共同住宅・戸建住宅や学校・病院等の公益施設の建設が近隣で行われ、周辺環境が変動し、テナントの操業に支障が発生することがあります。その結果、テナント需要が後退し、リートの収益に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、現状の船舶、鉄道、航空機、自動車による物流輸送の役割が、技術革新やインフラの利便性の変化、環境関連法規の制定による規制等により大きく変化した場合、それぞれを主要な輸送手段とする物流施設の役割が衰退することとなり、テナント需要が低下するおそれがあります。
また、投資対象としている物流施設に海外への輸送または海外からの輸入拠点として使用される物件も含まれているような場合には、テナント需要は、為替等の経済情勢にも左右される可能性があります。
投資法人の思惑通りの借入ができるとは限らない
③投資法人の資金調達に関するリスク
投資法人が借入れによる資金調達を行う場合、借入れの条件は、その時々の金利実勢、投資法人の収益及び財務状況、一般的な経済環境のほか、貸付人の自己資本比率規制などの法的・経済的状況等の多くの要因にしたがって決定されるため、投資法人が必要とする時期・条件で機動的に借入れを行うことができる保証はありません。
なお、既存の借入れについて返済期限が到来した場合に、同一の借入先からほぼ同一の条件で新規の借入れを行う借り換えについても、借り換えができなくなることや、金利、担保提供、財務制限条項等の点でより不利な条件での借入れを余儀なくされる可能性があります。
借入れについては、貸付人の保全措置の一環として、他の債務のための担保提供の制限、投資法人の収益状況や財務状態(負債比率(LTV)や元利金支払能力を判定する指標に関する財務制限条項など)が一定の条件を下回った場合における担保の提供、キャッシュリザーブ積立額の付加及びその積立額による期限前弁済、追加借入れ及び投資口の払戻し等の制限など投資法人の収益状況や財務状態及び業務に関する約束や制限が課されることがあります。
このような約束や制限が投資法人の運営や投資主に対する金銭の分配、投資口の払戻しなどに悪影響を及ぼす可能性もあります。また、そのような約束や制限に違反した場合、投資法人は借入金について期限の利益を失うことがあります。
さらに、借入れにあたり、投資法人は、保有する資産やその原資産の全部または一部を貸付人に対して担保に供することがあります。この場合、投資法人は、被担保債権を弁済しない限り、担保対象である資産を処分し、または不動産たる建物の建て替え等を行うにあたり、貸付人の承諾を取得する等の制限を受けることとなります。その結果、投資法人が必要とする時期・条件で資産や不動産を処分できないおそれがあります。
また、予測し難い経済状況の変更により、変動金利の場合における利払額の増加など投資法人の借入れに関する負担が増加した場合、投資主に損害を与える可能性があります。さらに、投資法人の資産の売却等により借入金の期限前返済を行う場合には、期限前返済コスト(違約金等)が発生する場合があります。この場合、そのコストはコスト発生時点における金利情勢によって決定される場合があるなど、予測し難い経済状況の変更により、投資主に損害を与える可能性があります。
なお、投資法人が資金を調達しようとする場合には、借入れのほか、投資口の追加発行の方法によることもあります。投資口の追加発行により資金調達を行う場合、投資口の発行時期・価格はその時々の不動産市況により左右され、場合により、投資法人の希望する時期・条件でこれを発行することができないおそれがあります。