(※写真はイメージです/PIXTA)

内閣府「令和3年版高齢社会白書」によると、男性の平均寿命が80.98歳であるのに対し、健康寿命は72.14歳。女性の平均寿命が87.14歳であるのに対し、健康寿命は74.79歳(いずれのデータも2016年時点)。2010年頃に比べて健康寿命は延伸したといわれていますが、最期の数年間は健康上に何かしらの問題を抱え、日常生活に支障をきたしながら過ごしているという事実は変わりません。なぜ、寝たきりが減らないのでしょうか。原因の1つとして、実は日本の介護の状況が大きく関係しています。

「生活期のリハビリ体制」がないために結局寝たきりへ

さて、ここからが問題です。

 

急性期・回復期で集中的にリハビリを受けてきたが、住んでいる場所に戻ってしまえば、多くの場合、その状態を維持し続けられないという現状があります。

 

そこで必要となるのが、3番目の段階の「生活期のリハビリ」です。生活期のリハビリは、機能やADL能力(日常を送るために、普遍的に行われる基本的かつ具体的な活動)の回復と同時に、それを維持し続けることを大きな目的としています。

 

実生活の中での機能改善が求められるのです。

 

そのため、医療機関を退院し、住んでいる場所に戻った人が寝たきりや閉じこもりになるのを防ぎ、自立した生活を支えるうえで大きな役割を果たすのが、生活期のリハビリだといっても過言ではありません。

 

ところが、この生活期のリハビリを受けられる機会が、あまりにも少ないのです。

 

生活期のリハビリは、医療保険による外来リハビリのほか、介護保険による通所リハビリ、訪問リハビリなどで受けることができます。

 

ですが、介護保険を利用するデイケアでは1回につき15分以上のリハビリ、デイサービスでは1回につき5分以上しか法的には求められません。

 

そのため、申し訳程度にしか行わない施設も少なくありません。

 

また、介護保険を利用せずに、民間の施設を利用するということも考えられますが、1回60分程度の利用で1万円を超えるところが多く、継続的な利用となるとかなりのお金が必要になってきます。

 

1ヵ月に最大90時間も受けられた回復期のリハビリに比べると、重要性ではそれに勝るとも劣らない生活期のリハビリは、申し訳程度にしか受けられない可能性が十分に考えられるというのが、今の日本の現状です。

 

つまり、せっかく急性期、回復期のリハビリで回復した身体機能を維持させるのが難しいのです。

 

リハビリを受けなくてはならないのに受けられない「リハビリ難民」が世の中にあふれてしまい、その難民たちの身体が弱っていき、寝たきりになってしまうのです。

 

 

神戸 利文

リタポンテ 代表取締役

 

上村 理絵

リタポンテ 執行役員兼事業部長、理学療法士

※本連載は、神戸利文氏、上村理絵氏による共著『道路を渡れない老人たち』(アスコム)より一部を抜粋・再編集したものです。

道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる

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神戸 利文
上村 理絵

アスコム

青信号で道を渡り切れず、怖くて買い物にも行けない。 トイレに間に合わず、オムツを重ね履きしている。 長期間の寝たきり生活を送り、家族に迷惑をかけているのが申し訳ない…。 間違った介護と医療で、急激に身体が弱っ…

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