「寝たきり予防」はリハビリの重要な役割の1つ
そもそも、リハビリテーションは、何のために行うのでしょうか? 「骨折や脳血管障がいとか、病気になった人がやるものでしょ?」と答える人もいるでしょう。
もちろん、そういった面もあります。しかし、それでは、リハビリテーション、いわゆる「リハビリ」の目的の一部しか言い表していません。
リハビリの本来の意味・目的は、「全人間的復権」、言い換えれば「人間らしく生きる権利の回復」です。
つまり、身体の機能に限らず、その人の生活や心の有り様などまで回復し、それらをさらに維持していくことが、リハビリの目的といえます。
また、リハビリは、そうして個人の幸福に寄与するだけでなく、社会課題の解決にも貢献することができます。リハビリによって、寝たきりを減らすことができるのです。
脳梗塞(のうこうそく)、膝痛、腰痛、リウマチ、糖尿病など、何らかの理由で障がいを抱えると、多くの人は外に出ることに消極的になります。特に高齢者では、その傾向が顕著です。
しかし、私たちの身体は、動かさないでいる状態が続くことで、筋肉が衰え、関節は硬くなり、体力も落ちて、急激に機能が低下していきます。
身体機能の衰えの行き着く先が寝たきりであることは、いうまでもありません。寝たきりは、本人や周囲の人にはもちろん、社会全体にとっても、大きな負担となります。
脚、腰、首の痛みや持病、障がいなどを抱えた人が自立した生活を送れるようにサポートし、寝たきりを防ぐのも、リハビリの重要な役割の1つなのです。
リハビリの「3つの段階」
脳梗塞の発症から約2週間までが急性期。続いて発症から約3〜6ヵ月までが回復期。その後は、住んでいる場所に戻りリハビリを行う維持期になりますが、最近では生活期といいます。
退院直後は不具合のある箇所以外は普通に動かし、継続してリハビリに取り組めばその機能や体力はさらに取り戻せるはずが、家にこもって身体を動かさないでいたために、身体機能がどんどん衰弱してしまう可能性があるのです。
それほど生活期のリハビリが重要な役割を担っているにもかかわらず、リハビリを受けられない人々、いわば「リハビリ難民」があふれているのです。
リハビリは、大きく「急性期」「回復期」「生活期(維持期)」の3つの段階に分けられます。
最初の段階は、たとえば骨折や脳血管障がいで病院に入院したとき、治療・手術などの処置後すぐに始められる、「急性期のリハビリ」です。急性期のリハビリは、病院への入院中に限り、1日3時間程度受けられます。
急性期の病院の平均在院日数は16.2日ですから、単純計算では急性期のリハビリを受けられる時間は計48時間ほどということになります。
急性期の病院を退院しても、機能の回復が十分でないと専門の医師が判断した場合には、回復期リハビリテーション病棟や亜急性期病床(あきゅうせいきびょうしょう)などで、さらに集中的にリハビリを行います。
これが、2番目の段階の「回復期のリハビリ」です。回復期のリハビリは、脳血管障がいや頸髄損傷(けいずいそんしょう)が最大180日、骨盤の骨折が最大90日などと対象疾患ごとに定められた入院期間中、1日最大9単位=3時間(1単位=20分)まで受けられます。
回復期の平均在院日数は約60日。単純計算では、回復期のリハビリが行われるのは最大で計180時間ほどとなります。