(※写真はイメージです/PIXTA)

近くにスーパーやコンビニのある便利な都会に住んでいても、「買い物難民」になってしまう高齢者たちがいることをご存じでしょうか。原因は「青信号のうちに道路を渡り切れない」こと。買い物難民は、必要な介護支援を受けていなかったために、身体の状態が「道路を渡り切れない」レベルにまで低下してしまった人々です。外出が難しくなれば身体機能はさらに弱まり、寝たきり状態に進みます。身体機能を長く維持するために知っておきたい、介護支援を始めるべきサインを見ていきましょう。

「早めの介護」こそ、家族に迷惑をかけない選択

そもそも、介護について考えることは、あなたの人生にとって、本来は絶対に欠かせない大切なことなのです。

 

あなたは、どのような介護支援を受けたいですか? こう尋ねられて、ぱっと答えられる人は、本当に少ないと思いますし、あまり考えたくないと思った方も多いのではないでしょうか?

 

では質問を変えます。人生最後、あなたは何をしたいですか? 趣味を謳歌(おうか)したい。いろいろな人と交流を持ちたい。できれば、家族に迷惑をかけずに自立した生活を送りたい。などなど、いろいろと頭の中に浮かぶのではないでしょうか?

 

最初と、その次の質問は、実は密接な関係を持ちます。なぜなら多くの人にとって、人生最後には、介護による支援を受ける必要が出てくるからです。

 

人間は、年齢とともに、いつかは必ず衰えていきます。健康に気を付けていても、運動をしていても、その衰えを緩やかにすることはできても、まったく同じ状態で生きていくことは、今の医学では不可能です。

 

突然死ということがない限り、時期の長短はあれど、介護を受ける、もしくは介護をする期間を経て、人は天寿を全(まっと)うします。

 

人生を1つの物語と考えたとき、介護の時期は、エンディングにあたります。

 

そして、「人生100年時代」といわれ、寿命が延びている中、エンディングの期間が長くなっているのは間違いありません。

 

どのような物語でも、どんなエンディングを飾るかが、作品の質を大きく左右するのではないでしょうか。それと同じで、どのような「余生」を送るのかは、その人の人生の質を左右するとても重要なことがらなのです。

 

しかし、多くの人たちは、その時期に対して備えることが頭の中になかったり、想像できていなかったりするのではないでしょうか。

 

2016年の日本人の平均寿命は、男性が80.98歳で、女性が87.14歳です。そして、元気に自立して過ごせる期間のことを「健康寿命」といいますが、これが2016年で、男性では平均72.14歳、女性では平均74.79歳です。

 

つまり、この健康寿命が過ぎたら何かしらの介護支援が必要になります。平均的に見て、男性は8年、女性で12年になる計算です。その期間をどう過ごすか考えたことはありますか?

 

「介護で家族に迷惑をかけたくない」という方は多いですが、具体的にそのためにどうすればいいか、答えをもっている方は少ないです。

 

そして、介護に関する情報や知識がないために、いざ介護に直面すると、自分たちで選択することができず、ただただ専門職がすすめる型にはまった支援を受け入れてしまった結果、その支援があわずに外出できなくなったり、早くから寝たきりになったりした。そんな介護に受け身にならざるを得ずに後悔している方たちに多く出会ってきました。

 

逆に、介護による支援がうまくいったおかげで、人生の最後に素晴らしい思い出を経験した方もいます。

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※本連載は、神戸利文氏、上村理絵氏による共著『道路を渡れない老人たち』(アスコム)より一部を抜粋・再編集したものです。

道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる

道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる

神戸 利文
上村 理絵

アスコム

青信号で道を渡り切れず、怖くて買い物にも行けない。 トイレに間に合わず、オムツを重ね履きしている。 長期間の寝たきり生活を送り、家族に迷惑をかけているのが申し訳ない…。 間違った介護と医療で、急激に身体が弱っ…

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