前回は、契約形態によって異なるオペレーティングリースの損金処理について説明しました。今回は、個人や法人が直接賃貸借資産を所有して、オペレーティングリース事業を行うことのメリットについて見ていきます。

個人の場合、納付税額自体が少なくなる可能性も

組合契約を利用したオペレーティングリース事業は、課税の繰延に制限が課されており、タックスメリットも限られています。そこで、組合契約を利用するのではなく、個人や法人が直接、賃貸借資産を所有して、オペレーティングリース事業を行うことを考えてみましょう。

 

個人が自己資金100でヘリコプターを取得し、法定耐用年数5年、賃貸期間5年、年間賃貸料10、定率法、賃貸期間経過後60で売却するものと仮定した場合の課税所得を見てみます。

 

1~5年目の課税所得は累計で▲50の赤字となります。他の所得との損益が通算され、最高税率50%が適用されている所得を減らしたと考えると、25の節税が実現できることになります。一方で、6年目にヘリコプターを60で譲渡したとすると、譲渡所得は総合課税の対象になります。

 

譲渡した資産の所有期間が5年を超えている場合、長期譲渡所得は譲渡益から特別控除額50万円を引いて、さらに2分の1にすると所得税法で定められています。ここでは、特別控除額を省略すると、長期譲渡所得は60×1/2=30となり、最高税率50%が適用されるとして、15が課税されることになります。節税額は25でしたので、15を納税するとしても、残りの10が得した分、節税したことになります(図表参照)。

 

この理由は繰り延べられてきた所得が2分の1になったことにあります。個人が自分でオペレーティングリース事業を行う場合、課税の繰延のみならず、納付税額自体も少なくなる可能性があり、大きなタックスメリットが見込めるのです。この節税効果は、中古市場でヘリコプターを売却しなければならないという取引(価格)リスクに対するリターンと考えることができます。

 

【図表 直接保有型オペレーティングリースの課税所得(個人)】

法人は減価償却を利用した「課税の繰延」が可能

法人が直接、賃貸借資産を所有して、オペレーティングリース事業を行う場合は、組合契約のような損金算入制限はないことから、減価償却を利用した課税の繰延を行うことは可能です。

 

また、組合契約がないので、買い手がいれば賃貸借資産をいつでも自由に売却できますから、所得を実現させるタイミングを自分でコントロールできるというメリットもあります。ただし、法人の場合、税率差は一般的に生じないため、個人のような節税は難しいでしょう。

本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『スゴい「減価償却」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

スゴい「減価償却」

スゴい「減価償却」

杉本 俊伸+GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

「減価償却で節税」とはよく聞きますが、課税と節税の仕組みを十分に理解して使いこなせている人は多くありません。 減価償却を活用するポイントは、タックスマネジメントです。タックスマネジメントとは、税額や納付のタイミ…

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