(※画像はイメージです/PIXTA)

練習熱心なアマチュアゴルファーほどゴルフ雑誌やユーチューブなどの動画で紹介されているようなテクニックを取り入れることがあります。しかし、それはそれはただの「情報」であって、上達してくれる「知恵」でもありません。※本連載は吉田洋一郎氏の著書『PGA 超一流たちのティーチング革命』(実務教育出版)から一部を抜粋し、再編集したものです。

アマチュアゴルファー失敗する典型的な理由

具体的に説明すると、たとえば、スイング中にクラブフェースが閉じていて、左に曲がるプルフックのミスが多いアマチュアゴルファーがいたとします。この問題を解決するために、トップの位置で上を向いているフェース面を、45度のスクエアな状態に変えることでフェースが閉じてしまうミスを解消しようとしたとしましょう。

 

たしかにフェースの向きをスクエアにすることで、プルフックの回数は減ると思いますが、それだけですべての問題が解消するかといえば、そう単純な話ではありません。フェースの向きを変えれば、他のスイング動作にズレが生じるのです。経験上、1つスイング動作を修正すると、3つズレが起きます。

 

この例の場合、フェースローテーションに1つめのずれが生じます。フェースが今までよりも開いているため左へのミスを防ぐことはできますが、インパクト前後にフェースを開閉する動きを入れないとボールがつかまらなくなり、スライスやシャンクが出る可能性があります。

 

また、それまでは腰を早いタイミングで回転させることでフェースがスクエアになっていた場合、体を速く回転させればさせるほど、フェースが開きボールがつかまらなくなります。

 

さらに、今までは手首の角度を開放するリリースのタイミングが遅く、ほとんど手首の角度をキープする意識だった場合、ダウンスイングでクラブが地面と平行になるあたりからリリースを意識してクラブヘッドを走らせないと振り遅れてプッシュアウトやダフリのミスが出てしまいます。

 

このように、トップのフェースの向きを変えるだけで、大きなパーツだけでも3つの修正ポイントが生じます。さらにフェースローテーションや体の回転、リリースポイントを修正しようすると、そこにも3つほど別の修正ポイントが生じます。つまり、スイングの一部分だけを直そうとしても、修正ポイントはネズミ算式に増えていき。結局はスイング全体を見直すことになってしまうのです。

 

最初からスイング修正によるズレの「副作用」を考えずに、安易に見た目を変えようとしたり、行き当たりばったりでスイングを直していくと、最後はつぎはぎだらけのスイングとなり、元に戻すことすらできなくなってしまいます。それだけ、ゴルフスイングというのは、多くの動作が複雑に組み合わさって構成されている繊細なものなのです。

 

病院でお医者さんから処方される薬には効果はもちろん、必ず副作用の説明が記載されていると思います。ゴルフのレッスンでも効果ばかり謳い、副作用やマイナス面の説明をしないのは、指導者の知識不足か、不誠実な対応と言わざるを得ません。

 

選手だと、日々の試合による疲れやコンディションによってスイングにズレが生じることがあります。この場合、疲れによるズレであることを認知して修正を図ればいいのですが、それをふまえずに修正を図るとそのズレが大きくなってしまうことがあります。こうなると頭と体がリンクせず、スランプにつながることもあるのです。

 

疲れたときにスイングがどのような状態になるかがわかっていれば、調整することは難しくありません。疲れによる変調はよくあることなので、その日の体調に合わせて技術をどのようにフィットさせていくかが大事になります。

 

ゴルフの場合、体調や身体動作の変化以外に、クラブのマッチングという要素もあります。こうした要素を総合的に見て、何によりズレが生じたのか、変化の原因を常に突きとめられるようにしておく必要があります。

 

吉田 洋一郎
ゴルフスイングコンサルタント

 

 

PGA 超一流たちのティーチング革命

PGA 超一流たちのティーチング革命

吉田 洋一郎

実務教育出版

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