(写真はイメージです/PIXTA)

金融機関は名義人の死亡を知った段階でその口座を凍結させるため、遺産分割が終わるまで遺族はその預金口座での取引ができません。遺産としての預貯金の取り扱いや注意点、必要な手続きについて、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が具体的な事例を交えながら解説します。

遺産分割における預貯金の取り扱いの変遷

先にご説明したとおり、預金の払戻し制度によって例外的に払戻しを受けられますが、それ以外の預貯金については、遺産分割協議が終わるまでは金融機関は払戻しに応じてくれません。

 

この点は金融機関の実務面において今も昔も同じですが、法律上の相続における預貯金の取り扱いは、平成28年12月29日の最高裁判決を境に大きく変わりました。遺産分割における預貯金の取り扱いがどのように変わったのか、これまでの経緯について紹介します。

 

以前は法定相続分に従って預貯金を分割

 

最高裁判決が出る以前は、相続財産としての預貯金は相続開始とともに当然に相続人が法定相続分に従って取得するものとされていました。そのため、法律上は、他の相続人の同意がなくても各相続人が自分の相続分の預貯金を引き出すことができました。

 

ただ、この考え方に従って各相続人に対して預貯金の払戻しをすると、後々にトラブルになりかねません。そのため、金融機関では相続人単独での払戻し手続きには応じない運用が実際には行われていました。

 

現在では預貯金は遺産分割の対象

 

平成28年12月29日の最高裁判決では、それまでの考え方が変更されて、預貯金も遺産分割の対象になるものとされました。

 

実務面では銀行の相続手続きにおいて既にそのような形で運用が行われていましたが、この最高裁判決が出たことで、法律も実務を追認したような形になりました。相続財産としての預貯金は、他の遺産と同様に遺産分割の対象です。

まとめ

ご家族が亡くなり相続が開始すると、多くのケースで遺産分割の対象に預貯金が含まれます。相続開始後の預貯金の取り扱いは、相続人が理解しておくべき大事なポイントの1つです。口座の凍結から最終的に相続手続きを終えるまでの流れを正しく理解しましょう。

 

相続開始後にはさまざまな手続きが必要になり、個々の手続きを自分でやろうとすると手間も時間もかかります。相続に伴う負担をできる限り減らすためにも、相続手続きでお困りの方は、専門家に相談するようにしましょう。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所 弁護士

 

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本記事はAuthense遺言・遺産相続のブログ・コラムを転載したものです。

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