(写真はイメージです/PIXTA)

金融機関は名義人の死亡を知った段階でその口座を凍結させるため、遺産分割が終わるまで遺族はその預金口座での取引ができません。遺産としての預貯金の取り扱いや注意点、必要な手続きについて、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が具体的な事例を交えながら解説します。

口座凍結解除に必要な手続き

預金口座の凍結を解除するためには、遺産分割協議を行ってその口座の預貯金を相続する人が決まり、預貯金を相続する人が銀行で手続きをする必要があります。

 

口座の凍結状態を解除して預貯金を相続する手続きでは、主に以下の書類が必要です。

 

[遺言書がある場合の手続き書類]

 

・遺言書

・(自筆証書遺言の場合)検認調書または検認済証明書

・被相続人の戸籍謄本または全部事項証明書

・相続人の印鑑証明書

 

[遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合の手続き書類]

 

・遺産分割協議書

・被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)

・相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書

・相続人全員の印鑑証明書

 

[遺言書、遺産分割協議書ともにない場合の手続き書類]

 

・被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)

・相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書

・相続人全員の印鑑証明書

相続開始後の手続きの流れ

遺言書が遺されておらず、相続人が2人以上いる場合、遺産をどう分けるのかを相続人の間で決める遺産分割協議を行います。相続開始後に遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成し、実際に金融機関で手続きをして預貯金を相続するまでの流れについて解説しましょう。

 

相続財産調査・相続人調査

 

相続が開始したら、まずは相続の対象となる遺産が何なのか相続財産調査を行います。そして、相続財産を相続する権利を持つ人が誰なのか、相続人調査も行わなければなりません。

 

相続財産調査では、預金口座の残高確認、金融資産の確認、所有している不動産の確認などを行います。借金などのマイナスの財産も相続では問題になるため、故人に借金がある場合にはそちらも確認が必要になります。

 

相続人調査は、故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取り寄せ、各相続人の現在の戸籍の取り寄せを行います。自治体に問い合わせて必要な戸籍すべてを揃えるのは、戸籍収集に慣れていない人が自分で行うと時間がかかることも少なくありません。

 

弁護士などの専門家に最初から依頼したほうが、結果的に手続きが早く終わる場合があります。相続手続きの進め方がよく分からない場合には、一人で抱え込まず相続の専門家である弁護士に相談すると良いでしょう。

 

遺言書の有無の確認

 

遺言書が遺されていれば、遺言の内容に従って遺産を分割します。遺言書が残されておらず相続人が2人以上いる場合には、遺産分割協議が必要です。遺言書が残されているかどうかで遺産相続の流れが変わるため、相続開始後には遺言書の有無も確認しなければなりません。

 

まずは、故人の自宅の机や棚の中を確認して、遺言書の有無を確認します。また、最近では、法務局で自筆証書遺言の保管も行っているため、そちらも必要に応じて確認します。

 

故人が生前に公正証書遺言を作成していれば公証役場で遺言書が保管されているので、公証役場での照会手続きも、必要に応じて行ってください。

 

遺産分割協議

 

遺言書が遺されておらず相続人が複数人いる場合、遺産の分け方を話し合って決める遺産分割協議を行います。

 

直接集まって話し合う形でもメールや電話で意見調整する形でも構いませんが、全ての相続人が協議に参加する必要があります。もし、相続人が一人でも欠けた状態で遺産分割協議行ったとしても、その協議は無効です。

 

なお、遺産分割協議を完了するまでの期限は特にありません。ただし、相続税の申告期限との兼ね合いで、相続開始から10ヶ月までに遺産分割協議を終えるというのが一つの目安と考えられます。

 

遺産分割協議が終わらないと相続財産を有効活用できない状態が続いてしまうので、相続人同士での話し合いはできる限り早めに行うほうが良いでしょう。

 

遺産分割協議書の作成

 

遺産分割協議を行って合意できたら、相続人の間で合意した内容を遺産分割協議書としてまとめます。遺産分割協議書を作成する法的な義務はありませんが、金融機関で預貯金の相続手続きをする際に必要になるなど、遺産分割協議書の作成は必須です。遺産分割協議書には、相続対象となる遺産や相続する人の情報を正確に記入します。

 

例えば、単に「銀行口座の預金は相続人甲が相続する」と書いただけでは、どの銀行口座の預金なのか分かりません。遺産分割協議書に預貯金を記載する場合には、銀行名や支店名、口座番号まで含めて記載します。

 

遺産分割協議書を作成したら最後に相続人全員が署名・押印しますが、遺産分割協議書は相続人の人数分だけ作成して、各自が1通ずつ保管することが一般的です。

 

1通だけ作成して1人だけが保管すると、後々にトラブルの原因になることがあります。遺産分割協議書は人数分を作成して各自で保管しましょう。

 

各種遺産手続き

 

遺産分割協議が終わってどの財産を誰が相続するのか決まったら、それぞれの財産を相続するための名義変更手続きを行います。

 

預貯金を相続する人は銀行の窓口で手続きが必要なので、遺産分割協議書や戸籍謄本などの必要書類を揃えて手続きを行ってください。無事に手続きが終われば口座の凍結は解除され、預貯金が振り込まれます。

 

次ページ遺産分割における預貯金の取り扱いの変遷

本記事はAuthense遺言・遺産相続のブログ・コラムを転載したものです。

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