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被相続人の預貯金の生前引出し(使途不明金)問題とは
最近、相続関係で増えている問題として、被相続人の預貯金の生前引出しの問題があります。日本では高齢化が進んでいるため、ご高齢の方が自分の財産の管理を子どもたちに委ねるケースは少なくありません。
また、入院中や施設入所中は、病室や施設に財産を持ち込むことが禁止されている場合も多く、親族に財産を預けざるを得ないこともあります。相続が発生した後に、財産を預かっていた子どもが、勝手に自分のために被相続人の財産を消費していたことが判明した場合、他の相続人たちは、どうすればいいのでしょうか?
生前引出し問題の例
■被相続人:母
令和3年1月1日に亡くなったが、亡くなる前の半年間は病院に入院していた。令和2年6月末日時点では、母の預貯金残高は3000万円であったが、令和3年1月1日の預貯金残高は500万円となっていた(入院中の費用は月額10~15万円だった。)。
■相続人:長女・次女
長女は、令和2年6月末日に母の通帳を預かり、保管していた。次女としては、母が入院中に2500万円もの現金を使うことはできないため、この2500万円は長女が使ったのではないかと思っている。
次女としては、この2500万円が残っていれば自分が取得することができたはずの分について、何かしらの請求がしたい。
このケースの場合、次女は、どのような請求をすることになるのでしょうか。以下、生前引出し(使途不明金)の手続きについて、解説していきます。
使途不明金を調査するにはどうすればいい?
被相続人の預貯金が思ったより少なく、使途不明金の疑いがある場合、どのようにして使途不明金を調査すればいいのでしょうか。ここでは、使途不明金の調査方法について、解説いたします。
使途不明金の有無を調べるために、まずは被相続人名義の預貯金などの取引履歴を取得しましょう。取引履歴を取得できる年数は、各金融機関によって異なりますが、直近10年分の取得が可能な金融機関が多いです。
各金融機関によって、必要書類や手数料が異なりますので、事前に問い合わせの上、必要な期間の取引履歴を取得しましょう。少なくとも、被相続人が自分自身で財産の管理をすることができなくなった時期から、現時点までの取引履歴は取得する必要があります。
金融機関とのやり取りや必要書類の収集が面倒だという方は、専門家に依頼することも可能です。取引履歴を取得したら、預貯金の入出金について調べましょう。
入出金の調べ方ですが、まずは、水道光熱費などの使途が分かる引き落とし以外に、数十万円単位の使途不明な引き出しがないかを確認し、それらについて、エクセルシートなどを使って整理するところから始めてみるといいと思います。取引履歴の中には、どこのATMで引き出されているか、ATMの番号が記載されているものもあります。
例えば、被相続人の自宅近くのATMではなく、財産を預かっていた子どもの自宅近くのATMからの引き出しが多数ある場合には、被相続人ではなく、その子どもがお金を引き出していた可能性が高くなります。
また、取引履歴だけでなく、被相続人の入院・入所期間や、入院・入所中の健康状態が分かる書類があるかどうかについて、病院や施設に問い合わせをし、そのような書類があれば病院や施設に依頼して取得しましょう。
そして、病院や施設から取得した書類と、金融機関の取引履歴とを比較し、例えば、被相続人の入院・入所期間中に、ATMで何回も出金している記録があるような場合は、被相続人以外の人が出金をしている可能性が高くなります。
また、被相続人の健康状態によっては、被相続人が外出もできない、あるいは、出金の依頼や指示すらできないような状況であることもあり、病院や施設から取得した資料で、被相続人が当時このような状況であったことが判明すれば、ますます、被相続人ではなく、財産を預かっていた子どもが、被相続人に無断でお金を引き出していた可能性が高くなります。
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