不動産サブセクターの動向
1.オフィス
三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2021年第3四半期の東京都心部Aクラスビル成約賃料(月坪)は34,934円(前期比▲1.1%、前年同期比▲8.2%)、空室率は3.3%(前期比+1.4%)で2017年第2四半期以来の3%台となった[図表3]。
三幸エステートは、「新築ビルへ移転したテナントの二次空室が生じたことに加え、オフィス戦略の見直しに伴い生じた大口の募集床が後継テナントを確保できず、現空床となるケースがみられた」としている。
ニッセイ基礎研究所は、東京都心部Aクラスビルの賃料見通しを9月に改定した。オフィス需要は力強さを欠き、空室率は緩やかな上昇が続く見通しである。成約賃料は、空室率の上昇を受けて下落基調で推移すると見込む。2020年の賃料を100とした場合、2021年は「100」、2022年は「98」、2025年は「92」への下落を予測する。
2.賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は、前年比でプラスを確保したものの頭打ち感も見られる。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2021年第2四半期の賃料は前年比でシングルタイプが▲0.6%、コンパクトタイプが+1.8%、ファミリータイプが+0.2%となった[図表4]。
3.商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、新規感染者数の増加に伴う行動自粛により百貨店とスーパーの施設売上が減少した一方で、コンビニエンスストアは増加した。商業動態統計などによると、2021年7~9月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が▲3.1%、スーパーが▲1.1%、コンビニエンスストアが+1.2%となった[図表5]。
ホテルセクターは依然として厳しい状況が続いている。宿泊旅行統計調査によると、2021年7~9月累計の延べ宿泊者数はコロナ禍以前の2019年対比で▲49.0%減少し、このうち外国人が▲94.3%、日本人が▲39.4%となった[図表6]。
東京五輪の無観客開催や緊急事態宣言の長期化に伴う夏季行楽シーズンの宿泊需要の消滅により、苦しい経営環境を強いられている。
CBREによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2021年9月末)は前期比+1.1%上昇の2.6%となった[図表7]。
先進的物流施設への需要は3PL企業を中心に引き続き堅調で、2021年第3四半期の新規需要は約13万坪となったが、新規供給は複数の大規模物件の竣工により過去4番目に多い約18万坪に達し、空室率が上昇した。一方、近畿圏は新規物件、既存物件ともにリーシングが順調で空室率は1.6%(前期比▲0.1%)に低下した。
J‐REIT(不動産投信)市場
2021年第3四半期の東証REIT指数(配当除き)は6月末比▲3.7%となり6四半期ぶりに下落した。セクター別では、オフィスが▲4.5%、住宅が▲4.2%、商業・物流等が▲2.7%となり全てのセクターが下落した[図表8]。
7月までは上昇基調を維持し9カ月連続で上昇となったが、その後は好調な株式市場への資金シフトや公募増資の増加、米国金利の上昇などを受けて下落に転じた。
J‐REITによる第3四半期の物件取得額(引渡しベース)は4,857億円(前年同期比+82%)、1~9月累計で1兆1,589億円(+18%)となり金額を大きく伸ばした。
アセットタイプ別の取得割合(1~9月累計)は、オフィス(44%)、物流施設(22%)、商業施設(13%)、住宅(13%)、底地ほか(7%)、ホテル(1%)の順となり、これまで低調であった商業施設の取得が回復した。
吉田 資
ニッセイ基礎研究所
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