(※写真はイメージです/PIXTA)

Google、Amazonとも世界有数の大企業ですが、日本では「合同会社」として事業を営んでいます。ほかにも「実は合同会社」の有名企業は多く、2019年に設立された法人のうち、合同会社は4分の1を占めています。法人化にあたり、なぜ「株式会社」ではなく「合同会社」を選ぶのか。税理士法人グランサーズの共同代表である黒瀧泰介税理士が、合同会社として法人化することのメリット、デメリットを解説します。

法人化の選択肢…「株式会社」と「合同会社」

法人化というと、多くの方は株式会社の設立を思い浮かべるかと思いますが、実は法人にはたくさんの種類があります。

 

利益追求を目的とする営利法人の場合、株式会社のほかに、合同会社・合資会社・合名会社があり、その他にも非営利法人も含めれば、NPO法人・一般社団法人・一般財団法人など様々な法人が存在します。

 

法人を設立する理由は千差万別ですが、資産運用を行っている方や1人社長が節税を目的として法人化をする際は、一般的に株式会社か合同会社のいずれかを選択します。

 

株式会社と合同会社にはどのような違いがあるのでしょうか。余談ですが、誰もが知っている次の外資系企業3社はいずれも合同会社です。

 

・アマゾンジャパン

・Google日本法人

・ワーナーブラザースジャパン

 

AmazonやGoogleの日本法人が合同会社である、というのは少し意外な感じがするのではないでしょうか。ちなみに、DMM.comやUSJも合同会社です。

 

合同会社は中小企業のイメージが強いですが、このように合同会社の形をとる大手企業もあります。

 

2006年の会社法改正で「有限会社」がなくなり、代わりに新しく誕生した法人が、アメリカのLLCをモデルとした「合同会社」です。

 

2019年には、新たに設立された法人、約12万件のうち3万件が合同会社となっており、その数は着実に増えています。

 

有名企業で合同会社を選ぶ理由には、合同会社では出資者である社員が実質的な経営を担うため、株式会社のように株主総会を開催し、意思決定をする必要がないため、組織形態のシンプルさと、意思決定スピードの速さがあります。

 

小規模事業者から有名企業が合同会社を選択する理由を解説していきます。

個人事業主が法人化するメリット

株式会社にするのか合同会社にするのかという話をする前に、そもそも個人事業主が法人化することでどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

なんとなく節税に繋がりそうというイメージだけで法人化の相談に来られる方も、多くいらっしゃいます。

 

個人事業主が法人化するメリットは、大きく次の3点です。

 

1.社会的信用の高さ

2.合同会社や株式会社は「有限責任」であること

3.節税可能な範囲が大幅に広がる

 

1.社会的信用の高さ

 

まず、個人事業主に比べて、法人は社会的信用が高く、取引先として信用されやすくなり、取引の幅が広がります。取引先によっては、相手が法人でないとそもそも取引をしない、または取引金額に制限を設けている会社があります。

 

上場企業や規模の大きい中小企業の場合でも与信調査のもと、取引相手の信用力をより重視する傾向にあります。

 

法人化をしている場合、会社登記簿や決算書申告書、信用調査により情報を集めることが比較的に容易です。

 

一方で、個人事業主の場合は決算書と確定申告書以外は情報がないことが多いため、信用力調査が法人と比べ情報量が少ないことから難しいと言われています。

 

個人事業主の中でも、様々な取引先と関わって、事業を広げていきたいと考えている場合は、法人化することが大きなメリットとなります。

 

2.合同会社や株式会社は有限責任

 

次に知っておきたいのは、有限責任/無限責任の違いです。個人事業主は、個人が主体となり、全責任を事業主が負うので「無限責任」となります。


万一、事業がうまくいかず多額の負債を負ってしまった場合、自宅などの個人の財産を持ち出してでも弁済しなければなりません。一方で、法人と個人は別物であると捉え、法人の活動から生じた責任を、経営者個人と切り離した考え方を「有限責任」といいます。

 

「有限責任」では、会社が倒産した場合でも、その責任は法人の財産の範囲内(=出資額)で負うことになります。営利法人の中でも、株式会社や合同会社の場合、出資者は「有限責任」しか負いません。

 

それに対して、合名会社や合資会社は、出資者の一部もしくは全員に「無限責任」が発生することもあって、一般的には株式会社もしくは合同会社で法人化します。

 

一方で、原則は、会社の責任と経営者個人の責任は切り離されますが、実務上は融資を受ける場合や事務所や店舗を借りる場合に、経営者は保証人になることを求められることが多いのも事実です。

 

出資者としての責任が有限であることに変わりはありませんが、保証人になってしまうと、融資返済すること自体に対しての責任が別に発生することになるので、結果的に、会社の借入金返済が滞ってしまったときには、経営者は個人のポケットマネーから借入金返済を行わなければならなくなります。

 

3.節税可能な範囲が大幅に広がる

 

個人事業主が法人成りする場合の最大のメリットは、節税可能な範囲が大幅に広がるということです。特に、個人事業主と大きく違ってくるのが「所得税」です。

 

個人事業にかかる所得税は、以下の表のように累進課税となり、所得金額が大きくなるほど税率も大きくなっていきます。

 

[図表1]所得税の速算表(引用国税庁)
[図表1]所得税の速算表(引用国税庁)

 

一方、法人が得た所得に対して課税される法人税は、所得税と異なり、税率は一律に定められています。法人税率は減少傾向になっておりまして、平成31年4月1日以後に事業年度が開始されるものについては、以下の表のような税率になっています。

 

[図表2](引用国税庁)
[図表2](引用国税庁)

 

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