(※写真はイメージです/PIXTA)

Google、Amazonとも世界有数の大企業ですが、日本では「合同会社」として事業を営んでいます。ほかにも「実は合同会社」の有名企業は多く、2019年に設立された法人のうち、合同会社は4分の1を占めています。法人化にあたり、なぜ「株式会社」ではなく「合同会社」を選ぶのか。税理士法人グランサーズの共同代表である黒瀧泰介税理士が、合同会社として法人化することのメリット、デメリットを解説します。

「株式会社」と「合同会社」…増資時の税負担の差

株式会社の場合

株式会社が増資する場合、増加した資本金に対して登録免許税を納付する必要があります。

 

登録免許税は、「3万円」または「増加した資本金の額に1,000分の7を乗じた金額(0.7%)」のどちらか大きい方の金額になります。

 

例:1,000万円増資した場合
10,000,000×0.7%=7万円(>3万円)
⇒登録免許税を7万円納付する必要があります。

 

なお、資本金として計上しない資本準備金という形もありますが、会社法上、増資額の最低限度1/2を資本金としなければならないため、無制限に使えるわけではありません。

 

合同会社の場合

一方、合同会社の場合は、株式会社のような資本金計上金額規制がありません。増資時に資本金を自由に決定することができます。

 

多少異なる点として、合同会社には資本準備金や利益準備金がないため、資本金として計上されなかった額は、資本剰余金に計上されることになります。

 

つまり、仮に1億円の増資を実施する場合であっても、資本金にはまったく計上せず、すべてを資本剰余金とすることもできます。資本金の額は登記事項ですが、資本剰余金の額は登記事項ではありません。

 

合同会社であっても、資本金を増やした場合は、当然変更登記の申請が必要になるため、増資額に応じた登録免許税が発生します。

 

しかし、合同会社がその出資額の全額を資本金剰余金に計上したときは、登記事項である資本金の額は変わりませんので変更登記は不要となり、結果、登録免許税もかからないということになります。

 

個々の金額としても、数万円の差は無視できませんが、法人化する以上は、ある程度長い期間保有することを考えると、累積すれば大きな金額差になることは容易に想像できます。

メリットだらけにみえる合同会社に潜む「落とし穴」

良いことばかりに見える合同会社ですが、注意しておくべき点もあります。よく言われるのが、合同会社は株式会社ほどの知名度がないため、取引先によっては契約上不利になる、採用時に人材が集まりにくい、などの信用面です。


ですが、積極的に事業拡大を行わず、個人事業主の延長で会社運営するのであれば、あまり気にすることはありません。

 

また、合同会社は利益配分を自由に決められるという特徴を持ちます。株式会社は、持ち株数に応じた利益分配をする必要がありますが、そういった制約がない分、合同会社は経営の自由度が高いと言えます。

 

その反面、利益配分に関わる社員同士のトラブルが起きやすい、というデメリットもありますが、これも会社規模や運営次第といえます。

 

気を付けなければならないのが、一人会社のケースです。小規模な合同会社の場合、家族への相続を前提に経営していることも少なくありません。

 

しかし、株式会社と異なり、合同会社では社員が死亡しても、そのまま社員の地位が相続人に引き継がれるものではありません(会社法607①三)。

 

そのため、一人会社の場合、出資者の死亡によって会社が自動的に解散となってしまうこともあります。これについては、知らなかったからといって事後対応のできるものではないため、必ず会社設立時に対応をしておく必要があります。

 

具体的には、あらかじめ定款に相続に関することを記載しておくことで、回避することができます。

 

定款の記載内容はそれほど難しいものではありません。一例をあげておきますので、もし、ご自身の合同会社定款に記載がない場合は、追加記載を検討してみてください。

 

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<定款の一例>

第○○条(相続及び合併による持分の承継)当会社の社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合には、当該社員の相続人その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継して社員となることができる。
--------------------------------

 

費用面も抑えられ、かつ、利益分配の自由度も高いため、小規模な家族経営に向いている合同会社ですが、実はこのような落とし穴が潜んでいるのです。

「合同会社」が向いている個人事業主

法人化する際、次のようなニーズがある場合は、株式会社よりも合同会社が向いています。

 

・個人事業主としてやるよりも大きな節税をしたい

・親族に収益を効率よく分配したい

・法人格が必要だが設立費用を抑えたい

・株式会社である必要がない

・決算公告や株主総会などの業務負担をなくしたい

 

つまり、資産管理会社や一人社長として創業し、かつ今後採用などをあまり考えていなくて節税に重きをおいているような法人設立の場合は、合同会社に魅力があるということです。


相続などを見据えた場合、注意すべきこともありますが、メリットとデメリットを十分考慮の上、合同会社での法人化を検討してみてください。

 

【この記事を動画で見る】

法人化で合同会社を選ぶメリットは?

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表 公認会計士・税理士

 

 

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