(※写真はイメージです/PIXTA)

「社長の役員報酬は2,000万円がひとつの目安」といわれています。多くのオーナー社長が一定の金額を超えて役員報酬を増やさない理由について、税理士法人グランサーズの代表である黒瀧泰介税理士が解説します。

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個人と法人の税負担、どちらが支払いを抑えられる?

「社長の役員報酬は2,000万円がひとつの目安」といわれていて、儲かっていても敢えてそれ以上の報酬を取らない社長の割合は少なくありません。その理由は、役員報酬を増やすことで、所得税など個人の税負担が大きくなりすぎることを回避するためです。

 

オーナーの財布と会社の財布がほぼ一体となっている企業の場合、会社と個人のどちらが支払うかということはあまり関係ありません。個人と法人の合算で、最大限、手元に残るお金を多くすることが重要なのです。

 

前提として、オーナー経営で会社と社長が一体か、そうでないかによって考え方は大きく変わってきますので、本記事でお伝えする内容は「オーナー経営で会社と社長が一体の場合」と考えてください。

 

今回、スポットを当てるのは「公的機関への支払い」、つまり、税負担等に関するものです。法人であれば利益に応じて法人税を支払わなければなりません。また、個人として報酬を受け取った場合であれば、所得税や住民税、社会保険料などといった支払いが発生します。

 

社長個人への報酬を増やせば、会社の利益は減るので法人税が減る一方、個人としての所得税などの負担は増えます。逆に、役員報酬を減らせば、個人の負担は減りますが、結果的に会社の利益が増えることで、法人税の支払いが増えます。

 

法人にお金を残したほうが良いのか、社長に役員報酬として支給したほうがいいのか……ここに手残り額を増やすカギが隠されています。

 

では、最適なポイントをお伝えする前に、それぞれの仕組みを理解していきましょう。

 

法人が利益を出した場合の負担

法人の場合、一番大きい負担が、税引前利益にかかる法人税です。これに、法人住民税や法人事業税などが加わり、実質的な負担額である法人実効税率が決まります。

 

・法人税額

課税所得800万円まで 15%

課税所得800万円超え 23.2%

 

基本になる法人税額の考え方自体は非常にシンプルです。一定ラインを超えれば、それ以降はどれだけ利益が増えても法人税の税率が変わることはありません。

 

細かな計算方法は省きますが、日本の場合、法人税をもとに計算される法人実効税率は約25%~35%で、地方税は事業所の登録地などによっても税率は変動します。

 

個人の所得に対する負担

個人の場合、主に所得税・住民税・社会保険料を見ていく必要があります。そのなかでも、法人との比較で、特に注目しなければならないのが所得税です。個人の所得は、超過累進税率といい、所得が大きいほど税率が高くなります。

 

こちらにある図表1のような形です。

 

[図表1]所得税の速算表 (引用:国税庁)
[図表1]所得税の速算表(引用:国税庁)

 

現在、所得税の最高税率は45%です。個人の場合、ここに住民税が10%かかりますので、合わせると55%になります。

 

さらに、現在は、東日本大震災からの復興施策を実施するために復興特別所得税が設けられており、令和19年12月31日までは時限的に2.1%が上乗せされます。

 

ここに社会保険料が加わったものが、主に個人の負担する対象となります。

 

ただし、所得税の計算には様々な控除があるため、仮に年収5,000万円を得たとしても、2,250万円(5,000万×45%)全額を所得税として納めるといった計算にはなりません。一般的な例の場合、実質的な年収に対する所得税負担率を計算すると、同条件の場合、30%強となります。

 

例)年収5,000万円の所得税

 誤)50,000,000×5%=2,250万円

 正)課税所得(50,000,000–社会保険料控除等)×45%-4,796,000=1,600万円前後

 

多少細かな計算をお見せしましたが、自分で計算できるようになる必要はありません。まずは、よく目にする所得税などの税率と、実質的な負担率には計算上の差があることを知っておいてください。

 

会社と個人が一体と考えられるオーナー企業の場合、個人の役員報酬にかかる所得税・住民税・社会保険料の「実質割合」と、25%~35%とされる「法人実効税率」を比較することで、合計支払額を抑えるための判断が可能になります。

 

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