(写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月6日に公開したレポートを転載したものです。

事業所調査の詳細:民間部門では幅広い業種で雇用伸びが鈍化

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+17.5万人(前月:+53.4万人)と前月から伸びが大幅に鈍化した(図表2)。

 

[図表2]非農業部門雇用者数の増減(業種別)
[図表2]非農業部門雇用者数の増減(業種別)

 

民間サービス部門の中では、運輸・倉庫が前月比+5.0万人(前月:+6.0万人)と、前月からの伸び鈍化が小幅に留まる一方、娯楽・宿泊業が+2.3万人(前月:+17.0万人)と前月から大幅に伸びが鈍化したほか、人材派遣業が+0.6万人(前月:+4.6万人)に減少した専門・ビジネスサービスが+9.0万人(前月:+12.1万人)、医療・社会扶助サービスも+0.4万人(前月:+5.9万人)と伸びが鈍化した。また、小売業は▲2.0万人(前月:+3.8万人)と減少に転じた。

 

財生産部門は前月比+6.0万人(前月:+9.4万人)と前月から伸びが鈍化した。製造業が+3.1万人(前月:+4.8万人)、建設業が3.1万人(前月:+4.3万人)といずれも鈍化した。

 

政府部門は前月比▲2.5万人(前月:▲8.2万人)とこれは前月に続いて減少も前月からマイナス幅が縮小した。内訳をみると、連邦政府が+0.2万人(前月:▲0.5万人)と小幅ながらプラスに転じたほか、州・地方政府が▲2.7万人(前月:▲7.7万人)とマイナス幅が縮小した。

 

前月(10月)と前々月(9月)の雇用増加数(改定値)は前月が+54.6万人(改定前:+53.1万人)と+1.5万人上方修正されたほか、前々月は+37.9万人(改定前:+31.2万人)と+6.7万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+8.2万人の上方修正となった(図表3)。

 

BLSの公表に先立って12月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+53.4万人(前月改定値:+57.0万人、市場予想:+52.5万人)と+57.1万人から小幅下方修正された前月を下回った一方、市場予想を上回った。

 

この結果、ADP社の統計は11月の雇用増加数が50万人超と前月からの雇用鈍化が限定的に留まっており、大幅に鈍化した雇用統計と不整合な動きとなった。

 

11月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が31.03ドル(前月:30.95ドル)となり、前月から+8セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.8時間(前月:34.7時間)と前月から+0.1時間増加した。この結果、週当たり賃金は1,079.84ドル(前月:1,073.97ドル)と前月から増加した(図表4)。

 

[図表3]前月分・前々月分の改定幅 [図表4]民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)
[図表3]前月分・前々月分の改定幅
[図表4]民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

家計調査の詳細:就業者数の大幅な増加を伴って労働参加率が増加

家計調査のうち、11月の労働力人口は前月対比で+59.4万人(前月:+10.4万人)と前月から大幅に伸びが加速した。内訳を見ると、就業者数が+113.6万人(前月:+35.9万人)となり、失業者数の▲54.2万人(前月:▲25.5万人)を大幅に上回って労働力人口を押し上げた。非労働力人口は▲47.3万人(前月:+3.8万人)と3ヵ月ぶりに減少した。

 

これらの結果、労働参加率は前月比+0.2%ポイント増加したほか、20年3月以来の水準となり、新型コロナ感染拡大に伴って落ち込んだ後の回復局面で最も高くなった(図表5)。

 

一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は11月が81.8%(前月:81.7%)と前月から+0.1%ポイント増加した。男女の内訳は、男性が88.2%(前月:88.1%)と前月から+0.1%ポイント増加したほか、女性が75.6%(前月:75.4%)と+0.2%ポイント増加した。女性の改善は2ヵ月連続となっており、学校再開に伴い子育て世代の労働市場への再参入が増加した可能性が考えられる。

 

11月の失業率は4.2%と21年6月の5.9%から5ヵ月連続の低下となり、9月に示されたFOMC参加者が予想する中期の失業率予想(4.0%)に近づいてきた(図表6)。

 

[図表5]労働参加率の変化(要因分解) [図表6]失業率の変化(要因分解)
[図表5]労働参加率の変化(要因分解)
[図表6]失業率の変化(要因分解)

 

11月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は219.0万人(前月:232.6万人)と前月から▲13.6万人減少した。一方、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは32.1%(前月:31.6%)とこちらは前月から+1.5%ポイント上昇した(図表7)。平均失業期間は28.9週(前月:26.7週)とこちらも前月から+2.2週長期化した。

 

最後に、周辺労働力人口(162.5万人)※1や、経済的理由によるパートタイマー(428.6万人)も考慮した広義の失業率(U-6)※2は、11月が7.8%(前月:8.3%)と前月から▲0.5%ポイント低下した(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.6%ポイント(前月:+3.7%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント低下した。

※1 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。

※2 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

 

[図表7]失業期間の分布と平均失業期間 [図表8]広義失業率の推移
[図表7]失業期間の分布と平均失業期間
[図表8]広義失業率の推移


 

 

窪谷 浩

ニッセイ基礎研究所

 

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