(※写真はイメージです/PIXTA)

日本経済を支えてきた日本の鉄鋼業界は赤字体質にあり、今後縮小していくものと見られます。業界再編以上は待ったなしですが、一方で、「新たな可能性」も…。 ※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

赤字体質とコロナショックで、事業展開へ“圧力”

総じて日本の鉄鋼業界は、2008年の金融危機やコロナショック以前から、国内経済として自動車生産や建設需要が横ばいから下方に転じている背景もあり、鉄鋼業界は冴えない内需の中、

 

①日本鉄鋼業界は内需より外需(特に中国を含めた海外需要に依存)しているという面、


②業界で主力の高炉型会社(日本製鉄やJFE、神戸製鋼など)は大部分が国内製造

 

という立地から、海外といっても輸出、となり、元々構造上コスト高の製品がさらに高価になりやすく、国際的な競争力は必然的に劣ってしまう、という事実があります。

 

そんな中75%の国内生産を誇る高炉型鉄鋼会社は、再編合併が近年でも次々と行われ(新日鉄と住友金属、そして日新製鋼は今、日本製鉄となり)、今は3社(日本製鉄、JFEと神戸製鋼)のみとなりました。

 

加えて3社のうち2社(日本製鉄と神戸製鋼)の上工程は、会社自身も公表しているほどの赤字体質であり、3社とも大事な上工程休止をしながら、所謂構造改革には取り組んでいました。そこに急激な鉄鋼需要減となる、コロナショックが畳みかかって、更なる構造改革を含めた事業展開への圧力がかかっている、ということです。

 

そのような縮小均衡へ向かっている同業界において経営陣による取捨選択が出てくるわけですが、例として神戸製鋼所は収益の出ている売却を進めています。

 

高炉型製鉄企業はグループ会社に電力、IT事業やエンジニアリング、不動産に加えて、鉄鋼商社事業、もしくは海外事業として鉄鋼関連の下工程の設備や鉱山の権益などを持っているケースが多く、その中では恒常的な黒字体質である事業も存在します。

 

難しさは今後も一部で事業売却はありえるものの、特に黒字ビジネスを売却しても、一時的なプラスになろうとも、本業の製鉄事業の悩みは消えず、製鉄事業の撤退も他事業とのシナジーを失うだけという、押しも引きもできにくい会社が多い、という点です。これには最適解がないのですが、本業を立て直す方策を国内市場でなければ、海外市場などに見つけなくてはならないわけです。

 

また国内市場においても、日本電炉の雄である、東京製鉄のように上手く時代のかじ取り(高炉企業が強いとされる、自動車用鋼板のシェアを取りに行く、という戦略)を取っておられる企業もいます。

 

日本の高炉系鉄鋼企業は、高品質・高機能な鋼板をトヨタ自動車等含めた日系自動車産業に提供しており、それが同社の競争力となり、同社の下流部門が顧客の生産拡大と共に海外へ事業を拡大する、という流れになってきていました。

 

(もちろん各自動車会社によって現地調達の比率を高くし、コストを抑える、など推進していますが、大きな流れとして日系鉄鋼企業も日系顧客の海外進出の恩恵を受けていた、という側面がありました。)

 

しかしその(世界一の自動車市場でもある)中国で、中国政府が強く導入を推進しているEV(電気自動車)にて、中国最大手の高炉型鉄鋼である、宝武鉄鋼が高品質であるため、中国のトヨタは今後商材を提供を受ける、というニュースがありました。

 

『今後は中国勢にシェアを奪われる可能性がある。日本勢が今後も投資を継続できる体力を維持できるかも不透明だ。』※

 

※ 『高級鋼板 競争新段階に 中国国策が後押し』 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61474810U0A710C2TJ2000/?n_cid=DSREA001

 

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最強の外資系資産運用術

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