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オミクロン変異株:パウエル議長は景気への下振れ懸念とインフレの不確実性を指摘
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2021年11月30日に米上院銀行委員会で行われる公聴会に先立ち、29日に証言テキストを発表しました。
パウエル議長はテキストの中で、「このところの新型コロナ新規感染の増加とオミクロン株の発生が雇用と経済活動に下振れリスクとなるとともに、インフレ動向を巡る不確実性の高まりをもたらした」と指摘しています(図表参照)。
どこに注目すべきか:オミクロン、議会証言、ワクチン、伝染、重症
南アフリカなどで見つかった新たな変異株オミクロンを巡る憶測が市場の変動要因となっています。オミクロン株が市場の変動要因となったのは先週末の報道や、国際機関の懸念表明などが背景です。一方、金融当局などのコメントに注目すると、当然のことながら、不安を抑える発言に終始している印象です。
オミクロンと命名される前からB.1.1.529として分析されてきましたが、市場で注目されたのは先週末からです。それから日も浅いこともあり金融当局の発言は限定的です。その中で主な元を見ると、FRBのパウエル議長は(恐らくオミクロン株を念頭に)ウイルスに関する懸念が強まれば、対面での勤務の意欲がそがれ、労働市場の正常化を遅らせてサプライチェーンの混乱を深めることになると30日(本日)の議会証言の原稿に記載しています。やや懸念を示しているようにも聞こえますが、用意された原稿には金融政策への言及は見られません。議会証言では議員からオミクロン株について質問がある可能性もあります。その場合、パウエル議長の答弁に興味があるところです。
なお、米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は先週末にメディアでオミクロン株をデルタ株と類似ならという条件付ながら過大な心配はしないと早々に述べています。
ユーロ圏ではフランス中央銀行のビルロワドガロー総裁がオミクロン株を注意深く監視する必要があるもののオミクロン株が経済見通しを一変させることは恐らくないだろうとオンライン会議で述べています。
また、日本銀行の黒田総裁は29日のオンライン会議で、今のところオミクロン株の日本経済への影響は小さいとの考えを述べています。金融当局者は現段階では市場を落ち着かせる必要から、このような発言になるともいえそうです。
ただし、これらの発言は立場を考えた発言で、必要ではあっても市場の変動を抑えるには物足りないと思われます。
30日午後、日本を始めアジア株現物市場、並びに欧米の株式先物市場が急落したのは米医薬品メーカー、モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)が、新たな変異株オミクロン株について、ワクチン効果は従来の変異株に比べ弱い可能性が高いとの見通しを示したことが背景です。
まだまだ解明されないことが多いオミクロン株ですが、市場が注目する主な要因は「感染力が強いのか?」、「重症化するリスクは高いのか?」、そして「ワクチンの効果はあるのか?」などで、ワクチンの効果について疑問が呈された格好です。当面はワクチンを開発する製薬メーカーや研究機関の発言などに最も注目が集まる展開が想定されます。
なお、重症化するかについては、一部の研究機関からこれまでのところ症状は軽いとの報告もありますが、判断にはもう少し時間をかけてみる必要がありそうです。
オミクロン株の感染は日を追うごとに感染者が発見される国が増えているのが現状です。市場は楽観、悲観の情報に市場動向は左右される展開が想定されます。ワクチンの効果などの判断には数週間(もしくはそれ以上)かかると製薬メーカーは見込んでおり、市場ではしばらくは変動の高い状況が続く可能性を覚悟する必要があるかもしれません。
※記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『オミクロン株と当局発言、注目すべきは』を参照)。
(2021年11月30日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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