(※写真はイメージです/PIXTA)

「都心立地のワンルームは10平米台でも借り手が付く」というのは過去の話。今は最低でも25平米以上、テレワーク勤務でもう一部屋望む声も聞こえてきます。10平米台狭小ワンルームのオーナーは、賃借人が引っ越し、半年以上も空室状態が続くなど苦戦続きです。そこで、「ミニマム・マルチ家具」を導入して狭い部屋を広く使いこなすアイデアはいかがでしょうか。

狭小ワンルームにとって、現在の市況は最悪だが…

 

コロナ禍以降の投資用ワンルーム市況を見てみますと、都心部の築浅物件であっても利回り5~6%(表面)を望む投資家がほとんどです。もっとも引き合いが多いのは30m2以上の物件で、10m2台は利回りを7%以上にしないと注目してもらえません。

 

利回りを上げるとなると、家賃を値上げするか、売買価格を下げるかのいずれかになりますが、不人気・未入居の物件では売買価格を下げるしかありません。テレワークニーズが沸騰する現況では、20m2台のワンルームでさえも安値で叩かれているほどです。

 

狭小ワンルームにとって現在の市況は最悪であるため、このまま保有して活かすことをおすすめします。要は多くのテレワーカーが望む「もう一部屋」を作ればよいのです。狭くでもアイディアを凝らせば新たなスペースを構築することはできます。

 

その手段の一つとして、変幻自在の家具、すなわち「ミニマム・マルチ家具」を活用する方法があります。家具の力によって新たな住空間を創造することができれば、入居者は暮らしやすさや面白さを見いだしてくれるはずです。

 

ミニマム・マルチ家具① Rotate(回転)

“回転”する家具のアイディアは、香港の建築系デザインスタジオ・Lim + Luが設計した「プッシュカートファニチャーシリーズ」から得ることができます。

 

ワンルームにひとつソファーを置いてしまうと、それだけで住空間が占領されてしまいます。Lim + Luのアイディアは、従来は横長に置いているソファーを、腰かけない時は回転させて縦に置き、ハンガーラックとして使用するというものです。

 

寛ぐときはソファーに、就寝時は縦に回転して衣服を掛け、余裕ができた床面に寝具を広げれば、狭小ワンルームでもゆとりを感じながら暮らすことができそうです。

 

この家具の応用で、ソファーの中央にアームレストを設置し、縦に回転した時にこのアームレストがタブレットサイズのテーブルになれば、ソファーの座面と背もたれの壁に包まれたテレワークスペースを作ることができます。

 

このように、家具の置き方を変える(=縦横回転)という発想から新たな空間を生み出すことが可能となります。

 

ミニマム・マルチ家具② Transform(変身)

インダストリアルなデザインで定評のあるブランド・Trent Austin Designの「コンバーチブルダイニングテーブル」は、5段の本棚だった家具が一瞬にして卓球台ほどの大きなダイニングテーブルに“変身”します。その仕組みは、本棚の棚板部分を水平方向にスライドさせることにより、棚板同士が横方向に繋がってテーブル状になるというものです。

 

10m2台の部屋に大きなテーブルを常に置いておくのは非現実的ですが、複数の友人が遊びに来た時など床に食材を並べてパーティーするのではあまりに貧相です。そういった機会のためにこのような本棚兼テーブルを常備しておけたら大変重宝です。

 

ミニマム・マルチ家具③ Fold(折りたたむ)

壁面の一部にベッドを組み込み、就寝の際には壁を斜めに下ろすように引き出す「ウォールベッド(またはウィングベッド、プルダウンベッド、マーフィーベッドなどとも呼ばれています)」も限られたスペースを有効活用できる家具のアイディアです。

 

狭小ワンルームの住空間を大きく占有してしまっていたベッドを“折りたたむ“ように壁面へと収容できるもので、1970年代のワンルームマンションにもよく採用されていた建付け造作です。近年の新築物件ではほぼ見られなくなりましたが、コロナ禍におけるテレワークニーズをきっかけに再評価されるかもしれません。

 

折りたたむというスタイルでは、本棚の一部に組み込まれた板材を引き出すと読書机になる「ライティングビューロー」の考え方とも重なります。ライティングビューローはアンティークショップでも取り扱われる歴史のある西洋家具です。

 

ライティングビューローもウォールベッドと同様に「スペースを有効活用する」というコンセプトのもと誕生したもので、住宅規模が大きい西洋の暮らしにもそういった概念があるのかと意外に思いますが、より広い住空間を望む気持ちは万国共通ということなのかもしれません。

住空間の有効面積を増やし、入居者を惹きつける

 

住空間を占有する大きい家具を「回転させる」「変身させる」「折りたたむ」ことにより、住まいの有効面積を増やすことは可能です。

 

ここでは世界各国で製作されているミニマム・マルチ家具数例について紹介しましたが、オーダーメイドであったり、1点物であったりとほとんどが入手困難です。しかし、これらのアイディアからインスピレーションを膨らませて、お付き合いのある工務店やリフォーム業者の協力も得ながらオリジナル家具を造るという手もあります。

 

通常より施工費は少々高額になってしまうかもしれませんが、原状回復リフォーム時にこれらミニマム・マルチ家具の造作を付け加えれば、30m2超物件にも引けを取らない、空室知らずの賃貸物件に生まれ変わるかもしれません。

 

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※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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