上司が自分の指示を完全に忘れて激怒…問題の本質は?
実はボーナスよりも影響が大きかったのは、一度最低点がつけられると、それを挽回するには数年を要するという会社の査定システムでした。このため、私は将来の昇進にとって、極めて大きなハンデを背負うことになってしまったのです。
上司が困っているだろうと思い、上司を助けるために依頼を気持ち良く引き受けたのに、私を待ち受けていたのはこのような実に理不尽な評価でした。私は上司に裏切られた気持ちで激しく落胆し、何とも言えない苛立ちを感じました。
面接のあった夜は、悔しくて一睡もできなかったのを覚えています。言うまでもなく、上司に激しい怒りを感じるとともに、この怒りを訴えて出るところもないという会社のシステムに、まさに、はらわたが煮えくり返る思いをしたのです。
■どのように解決したらよいのか
さて、この事例の本質は一体何でしょうか。この上司は自分の指示したことを完全に忘れてしまっています。そして、私が「それはあなたが指示をしたのだ」と言っても、まったく耳を貸しませんでした。
一見すると、上司が自分の指示を完全に忘れてしまっているのですから、彼が私の言葉に耳を貸さないのは当然のことのように思えます。すなわち、上司が自分のした指示を忘れたことこそが、この問題の本質のように思えるのです。
しかし、物忘れや勘違いといったことは誰にでもあることです。誰かが物忘れや勘違いをするたびに、常にその相手は激しいストレス場面に巻き込まれてしまうのでしょうか。そうならば、人間社会では頻繁に、また場所を選ばず、ストレスがあちらこちらで発生していなければなりません。
実はそうではないのです。私が事実を話しても上司がまったく耳を貸さず、あまつさえ言いわけと思って怒り出したという点が、この事例の一番の問題点であり本質なのです。
完全に自分の指示を忘れてしまっていたとしても、部下である私の主張に耳を傾けることはできたはずです。そして、私の言い分を理解し、自分の思い込み(「研究所を手伝ってくれという指示はしていない」という勘違い)を修正していくことは可能なのです。
しかし、私の上司はまったくそうしませんでした。なぜでしょうか?
実は、この上司は「イエス・バット」のゲームを私に仕掛けているのです。このゲームは、相手の言うことをことごとく否定するゲームなのです。相手は何を言っても否定されるので、その結果、ものすごいストレスにさらされることになります。