(※写真はイメージです/PIXTA)

技術コンサルタント、心理カウンセラーである永嶋良一氏は書籍『心理学で職場の人間関係の罠から逃れる方法』のなかで、職場での苦いやり取りを赤裸々に語っています。本記事で紹介するのは「上司が自分の指示をすっかり忘れていた」という恐ろしい事態。あなたならどうしますか?

「なるほど」「でもね…」と続く。恐ろしい会話のワザ

「イエス・バット」というゲームの名前は、相手の言うことを「そうですね」と一旦受け止めたあと(イエス)、毎回「しかし、あなたの言うことは……」と反論する(バット)という局面から名づけられたものです。

 

このゲームは、職場などいろいろな場面で実によく使われるのです。なぜなら、相手が何を言っても否定するだけですから、ゲームを仕掛ける側は、ゲームを極めて簡単に実行できるからなのです。

 

しかし、ゲームを仕掛けられたほうはたまったものではありません。何を言っても否定されることによって非常に大きなストレスを抱え込んでしまうことになるのです。つまり、相手を攻撃する側から見ると、手軽に実行できて、それでいて相手に極めて大きなダメージを与えることができる効果的な手法だということができます。

 

実は私の知っている医師が患者から「イエス・バット」のゲームを仕掛けられて困っていました。その患者が定期的に通院してくるのですが、何をアドバイスしても言い返してくるので、その医師はその患者と顔を合わすたびに大きなストレスを感じていました。

 

例えば、医師が「ストレスが原因ですので、2、3日休暇を取って旅行にでも行かれたらいかがですか」とアドバイスすると、患者は「仕事が忙しくて、なかなか休めないんです」と否定し、さらに医師が「それでは気分転換に、趣味に打ち込んでみてはどうですか」と言うと「これといった趣味もないんです」とまた否定するといった具合です。

 

この結果、普段は温厚な医師が、その患者が診察室に入ったときはいつも、イライラして廊下に響き渡るような大声で怒鳴り散らすというありさまでした。結局、その患者の担当を別の医師に代わってもらって、やっと安堵できたという次第です。

 

この「イエス・バット」というゲームでは、そのゲームを仕掛ける理由は一つだけではなく複数存在します。このため、状況に応じて、その理由を判断していくことが必要になります。

 

この事例ですと、上司は自分を権威づけるために、私の言うことにまったく耳を貸さなかったのです。耳を貸さないことで、自分の意見や判断は絶対的なものだということを誇示しているのです。否定することが目的ですので、この上司に何を言っても否定されるだけです。

次ページ「相手にせず早く忘れてしまう」ほかない。

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『心理学で職場の人間関係の罠から逃れる方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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