通信教育のN高が初の東大合格…私立有名中高一貫校の存在価値 (※画像はイメージです/PIXTA)

通中学受験専門カウンセラー安浪京子 × 教育ジャーナリストおおたとしまさ。「そもそも学校にいかずに中学生のうちから東大受験専門塾に通って鍛えるのが一番強い」と教育ジャーナリストのおおた氏は指摘します。言葉の真意とは。 ※本連載は安浪京子氏、おおたとしまさ氏の著書『中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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「学歴がほしいだけなら中学受験するな」は本当か

安浪 「学歴がほしいだけなら中学受験するな」って、またずいぶんと天邪鬼なタイトルですけど(笑)。

 

おおた いい大学に入りたいだけだったら、そもそも学校なんか行かずに、中学生のうちから東大受験専門塾に通って徹底的に鍛えるのが一番強いんですよね。6年間それだけの生活に耐えられればですけれど(笑)。

 

ちなみに、通信教育をしているN高が2020年に東大に1人、京大に3人の合格者を出して話題になりましたが、その合格者には有名私立中高一貫校からの転校生もいるようです。これからN高が東大合格、京大合格をバンバン出そうと思ったら、それこそ開成や桜蔭や灘みたいな超進学校から学校に行きたくない優秀な生徒たちを特待生で引き抜くこともできるわけです。

 

安浪 まさしくそうです。

 

おおた つまり、中高一貫校の環境が受験に有利だからとか、先取り教育ができるとか、何か能力や武器を持たせてくれるわけではなくて、生徒の学力的な器がそもそもちがうということ。

 

安浪 わかります。そういう子は、どこの学校にいようと東大に受かる。

 

おおた 「じゃあ、なんのために私立の一貫校に行くの?」というと、「その学校らしさ」、それを僕は「ハビトゥス」とか「家付き酵母」(昔の味噌や醤油の蔵元に住み着いていた酵母のこと)と呼んでいるのですが、そういうものを得るために行くんです。

 

■コロナ休校で露呈した真の「その学校らしさ」

 

安浪 コロナ禍の休校期間中に感じたのは、その「家付き酵母」を出せる学校と出せない学校があったということです。

 

おおた というと?

 

安浪 私が主催している掲示板で、休校中の学校の対応の情報を書いてもらったんです。世の中が変化していく中で、それぞれの学校が何を打ち出そうとしているかが露呈した。今はオンライン化したり、いち早く授業配信したりする学校がもてはやされますが、大事なのはハードではなく中身だとつくづく感じたんです。たとえば、ある女子校は、初期対応は遅かったものの英語動画だけは早く出ていると聞いて、見てみたんです。すると、クラッシー(学校教育ICT化のためのクラウドサービス)が配信している英語動画だったんですね。

 

おおた スタディサプリ(視聴型のウェブ学習サービス)を使っていた学校もあったようですね。

 

安浪 既成のものを使うのが悪いわけではないけれど、たとえば渋渋(渋谷教育学園渋谷)では「らしさ」が出ていた。ここも初期対応が遅めだったので、親たちは「渋渋ってこんなに紙文化なの?」とげんなりしていたようですけど、出された課題の内容がすごくおもしろかったんです。

 

おおた 内容が?

 

安浪 はい。いろいろなかたちで手を動かす学習ですね。たとえば、中1の化学では、「家の中や窓の外にある元素を探し、写真を撮って貼るかイラストを描く」という課題がありました。もちろん、探すヒントも提示されています。そしてビギナーは10種類、エキスパートは30種類、マスターは60種類と、興味に応じてチャレンジできるようになっていて、元素の勉強が初めてでも、一人で探求していく工夫がされていると思いました。

 

おおた たしかに。教室でやっても退屈な元素記号を「一人で覚えなさい」と言われても、どれだけの中学生ができるのよ、と思いますよね。手を動かす学習といえば、麻布は「野菜を使った料理を考えなさい」という課題が出されていたようです。

 

安浪 そういう意味で、学校も二極化しているなと思います。ただ、この「家付き酵母」の話で付け加えると、こうした学校文化とか「らしさ」まで理解して学校選びをする人は、まだまだ少ないと思うんです。地方出身の私からすると、中学受験文化のない地方出身の親が一度は「偏差値至上主義」的なルートをくぐり抜けて、ようやく学校文化や「らしさ」で学校を選ぶ境地にいたれるんだと思います。

 

おおた ああ、そうかもしれないですね。「首都圏の教育文化を理解せずに、自分の受験体験を基にして子どもの受験や進学を決めてしまうのは危険」というのは書かせてもらったし強調したいところですが、一方で、首都圏には私立中高一貫校がたくさんあるから、えり好みしなければどこかには入れるはずなんですよ。中学受験をすると決めたからといって、受験刑務所のような生活をしなければいけなくなるわけではありません。

 

株式会社アートオブエデュケーション代表取締役
算数教育家
中学受験専門カウンセラー

神戸大学を卒業後、関西、関東の中学受験専門大手進学塾にて算数講師を担当。生徒アンケートでは100%の支持率を誇る。プロ家庭教師歴約20年。きめ細かい算数指導とメンタルフォローをモットーに、毎年多数の合格者を輩出。中学受験、算数、メンタルサポートなどに関するセミナーを開催、算数力をつける独自のメソッドは多数の親子から支持を得ている。「きょうこ先生」として多数のメディアでさまざまな悩みに答えている。著書に『最強の中学受験 「普通の子」が合格する絶対ルール』など多数。

著者紹介

教育ジャーナリスト

1973年、東京都生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退、上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育媒体の企画・編集に関わる。教育現場を丹念に取材し斬新な切り口で考察する筆致に定評があり、執筆活動の傍ら、講演・メディア出演などにも幅広く活躍。中学・高校の英語の教員免許、小学校英語指導者資格をもち、私立小学校の英語の非常勤講師の経験もある。著書は60冊以上。

著者紹介

連載中学受験の2大カリスマが教える「中学受験の真実&新常識」

中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール

中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール

安浪 京子 おおた としまさ

大和書房

中学受験では、親が子どもをサポートしようと一生懸命になるほど、無意識に子どもと一体化し、中学受験の迷信に縛られて子どもを追い詰めてしまいがちだ。子どもの人生は合格発表の瞬間に終わるわけではない。大人が子どもの受…

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