まだまだしっかりしていると思っていた80代の母親が、妹にそそのかされ一部の不動産を売却していたことが判明。しかも妹は、売却代金が振り込まれた通帳まで持ち去りました。やりたい放題の妹の行動に、姉は不安を募らせています。一体どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
【関連記事】老父の看護に尽くした後妻に「財産隠ぺい」の濡れ衣を着せた、子らの胸の内
母親に不動産を売却させ、通帳を持ち出した妹
今回の相談者は、50代会社員の吉田さんです。吉田さんの母親の資産のことで悩み、筆者のもとを訪れました。吉田さんの母親は80代と高齢ですが、いまも元気にひとり暮らしをしています。父親は15年前に亡くなっているため、母親の相続人は、長女である吉田さんと、3歳下の妹のふたりです。
吉田さんと妹は、ともに離婚経験者で、シングルマザーとして働きながら子育てをしています。
吉田さんは実家から徒歩3分程度の場所にある母親名義の土地に、自分名義の建物を建てて暮らしています。妹は、実家から2時間程度の距離の賃貸マンションに住んでいます。
母親は健康で、いまのところ日常生活への不安はありませんが、一方、資産管理等には心配な部分が見えてきました。
じつは3年ほど前、母親は自身が保有するアパートを、吉田さんに黙って売却したことがあったのです。あとから調べると、売却は母の意思ではなく、妹が主導していたことが判明しました。しかも、売却代金が振り込まれた母親名義の通帳とキャッシュカードまで、妹が持ち去っていたのです。恐らく母親は、妹に言われるまま売却したようです。
そのような経緯から、吉田さんは母親のほかの通帳類も確認することにしました。すると、母親の手元からすべての通帳類がなくなっていたのです。「振込詐欺対策のために預かる」と妹に説明され、託したとのことでした。
これを知った吉田さんは非常に驚き、母親の手元にあった印鑑のほうを持ち帰ることにしました。この件で吉田さんと妹は激しい口論となり、絶縁状態となってしまいました。
いまは元気な母親も、高齢であり、いつ状況が変わるかわかりません。母親が亡くなったあとの遺産分割協議では、感情的な争いとなることが予想され、憂鬱な思いです。
母親がしっかりしている間に、ある程度の分割の取り決めをしたいのですが、どうしたらいいのかわからないということでした。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続実務士発!みんなが悩んでいる「相続問題」の実例