日本型の不動産バブル崩壊の可能性は非常に低い;『共同富裕』の意義
日本型の不動産バブル崩壊を懸念する向きもありますが、中国は、日米欧の金融危機に学んでおり、自由市場に任せて不動産価格の下落を看過することはないと思われます。
その理由は、不動産価格の継続的な下落を容認すると、誰もが債務の最小化を目指す「バランスシート不況」(デフレ不況)が生じてしまうためです。
確かに、所得対比の不動産価格高騰は、どの国であっても国民の不満を招くものです。
しかし、①「不動産価格を下げることで不動産を買いやすくする」ことは、不動産取得が債務によって賄われている以上、企業や家計のバランスシート調整が続いたり(→需要の抑制)、銀行が多額の不良債権を抱えたりするなど、経済活動や家計所得が縮小してしまい、所期の目的が達成されない状態に陥ります。
これを避けるためには、②「所得を上げることで不動産を買いやすくする(あるいは所得支援を拡大してそう見せる)」ほかありません。『共同富裕』思想は(手遅れの感があるものの)これを実現しようとする試みであり、そのために巨大企業への課税策や学習塾の非営利化といった措置が検討・導入されていると見られます。
国家は大きなインフレを許容できない
どの国家もそうですが、特に独裁的な国家体制においては、体制維持のために大きなインフレを避けなければなりません。言い換えれば、そうした国家はたいてい、大きなインフレによって崩壊します。
中国では、習近平氏が権力を掌握した2012年11月以降、生産者物価の上昇時にも消費者物価指数(CPI)が安定して推移しています。
その裏側では、企業に価格転嫁の抑制を強いているわけですから、最近の操業抑制やコロナ対策などと合わせて、企業業績には幾分の縮小圧力が生じるでしょう。
結ぶと、2022年は米国を中心とする先進国への資金配分を継続することが望ましいと考えられます。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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