企業の設備投資と在庫投資が進む見込み
米国の設備投資に関する先行指標である「資本財受注(国防・航空機を除く)」(=コア資本財受注)は、パンデミック前の最高水準を更新して増加しています。
企業は、早期リタイアを含むパンデミック後の労働者不足に直面し、企業は省力化・自動化投資に取り組むと見られます。
①(資本で調達すれば高いが、負債で調達すればゼロ金利で済む)資本コスト、
②(高齢化を含め労働供給の不足が拡大する中での)労働コスト、
③テクノロジーの進化
を考え合わせれば、「資本(機械)による代替」はますます進む可能性があります。企業は、売上高が伸び悩む局面でも利益を増やすことを求められるため、生産性向上やコスト削減により、マージンの確保に努めると見られます。
また、米国企業の卸売在庫/売上高比率は、パンデミックを受けて、大きく低下しています。
今後を考えると、企業は、生産停滞の継続による仕入れ価格の再上昇を恐れ、多くの在庫を早めに確保するインセンティブ(誘因)を持ちます。さらには、パンデミックを機に在庫の水準を増やす可能性も考えられます。
大幅なマイナスの実質金利が、設備・在庫投資を後押しすると見られます。
中国景気にダウンサイド・リスク
他方、中国については、
②最終財・サービスへの価格転嫁抑制や人民元高による利益の圧迫、
③不動産への信用抑制や規制強化
などで、景気に幾分のダウンサイド・リスクを考える必要があるでしょう。
与信の状況を見ると、中国は、昨年の夏に不動産開発企業に「3つのレッドライン」と呼ばれる融資基準を課した後、今年の初め頃から与信の抑制が鮮明になっており、景気にはまだしばらく下押し圧力がかかると見られます【図表9】。
ただし、経験則からいえば、このあたりで与信の縮小には歯止めがかかるはずであり、実際、
②中国人民銀行が流動性の供給を増やしたりする
など、緩和姿勢に転じています。