「悔しい思いもたくさんした」と話す大迫環奈さん(仮名)

自閉症の特徴の一つに、触れ合いを苦手とする「接触過敏」という症状があります。そのせいで娘と手を繋げないと語る大迫環奈さん(仮名)35歳は、当時、周囲からの心ない言葉に苦しんでいました。今回は、そんな彼女を救った医師の言葉を紹介します。

「命を守ることがなぜ悪いことなの?」

それは、娘さんを自閉症と診断してくれた医師の元へ定期検査に訪れた時のことだったそう。

 

「私は、最近娘がたくさん歩けるようになったこと。でもそのせいで目が離せなくて、ハーネスを付けるようになったことを話しました。そして、あの女性に言われたことも……。『ハーネスを付けることは悪いことですか?』と主治医に聞きました。他に方法があるなら教えて欲しい、そんな思いも持っていました」

 

涙ながらに訴える環奈さんに医師は聞き返したのだそうです。

 

『命を守ることがなぜ悪いことなの?』

 

『他の誰も、娘さんに何があっても責任は取ってくれないよ。はたから見たら可哀想に見えてしまうのかもしれない。みんな事情を知らないからね。でも、あなたの行動は誰が何と言おうと正しいよ』

 

「主治医にそう言われて、私はスッと胸のつかえがとれました。それまで、娘が危ないからとハーネスを付けるのも、人に批判されるのが怖いから近所の公園にしか連れて行ってあげられないのも、全部親である私の都合なのかもしれない、と思っていました。当時の私は、考えも行動もすべて中途半端で自分に自信がなかったんです。だからはっきりと『正しい』と言ってもらえて本当に救われました」

医師の言葉が苦しみから脱するきっかけをくれた

医師の力強い言葉に励まされたという環奈さん。

 

その後、リハビリとして最初は旦那さんと3人でのお出かけから再開し、次第にまた茉莉花ちゃんと2人で、人の多い所にも出かけられるようになったといいます。

 

「あの時、主治医に『正しい』と言ってもらえてなかったら、私はずっと娘を狭い世界に閉じ込めてしまっていたかもしれません。主治医には本当に感謝しています」

 

そして、環奈さんは思い出したようにあるものを取り出しました。

 

「そういえばこの前初めて、娘がプレゼントをくれたんです。道端で拾った石なんですけど……ちゃんと手渡しで、私の手に載せてくれました」

 

そう言って見せてくれたのは、表面がつるつるした3センチほどのグレーの石でした。それを環奈さんは、嬉しそうに優しく撫でていました。
 

 

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録