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ブラジル中銀総裁:インフレ懸念を警告すると共にインフレ抑制の重要性を強調
ブラジル中央銀行のロベルト・カンポス・ネト総裁は先週末のイベントでブラジルの長期的な成長力が低下する懸念があると述べました。ロベルト総裁は次回の金融政策会合(12月8日)で、22年の成長率見通しを下方修正する可能性を示唆しました。
ロベルト総裁はブラジルのインフレにも懸念を示し、物価の上昇が拡がりつつあると警告しています(図表1参照)。そのうえで、インフレを抑制することが潜在成長率並みの経済成長を達成するうえで主要な手段であると強調しました。
どこに注目すべきか:ブラジル、インフレ、財政政策、大統領選挙
世界的にインフレ懸念が広まる中、主要新興国のうち、トルコと並んでインフレが深刻なのはブラジルです。ブラジルのインフレ率が上昇した背景としては、干ばつやエネルギー価格上昇など外的要因が考えられます。一方通貨レアル安もインフレの重要な要因で、この背後には政治の不透明感による影響が大きいと見られます。
まず、干ばつの物価に対する影響を見ると、食料品価格にやや上昇が見られます。干ばつを受けた飼料不足による鶏肉の値上がりなどによります。
しかし最大の懸念は電力料金と見られます。ブラジルの電源構成を見ると大半が水力発電ですが、水不足でコストの高い火力発電に切り替える必要があったうえに、エネルギー価格の上昇が追い討ちをかけた格好です。
なお、ブラジルの電気料金は水力発電料金を基準に水不足や火力発電への代替度合いに応じて電力価格を引き上げる仕組みとなっています。
また、拡大消費者物価指数(IPCA)を項目別に見ると、電力やエネルギー価格の上昇を受け航空運賃などを反映する交通費が前月比2.6%と9月の1.8%から大幅に上昇すると共に、項目別で高い上昇率となっています。
次に、レアル安はインフレを悪化させる懸念があります。ここでブラジル中銀のインフレ予想を先日発表された金融政策会合の議事要旨で確認すると、21年が9.5%、22年が4.1%、23年は3.1%への低下を見込んでいます。ただその前提としてレアルの対ドルレートは1ドル=5.6レアル近辺で推移しており、少なくとも現状程度を維持することが求められそうです。
また、政策金利の想定は21年が8.75%、22年が9.75%となっています。過去を見てもインフレ率上昇は個人消費を落ち込ませる傾向があるだけにロベルト総裁は金融引締めを優先する考えです(図表2参照)。市場では大半が12月の金融政策会合で1.5%の利上げを見込んでいます。
ところが、これと対称的なのはブラジルの政治、もしくは財政政策です。低所得層や燃料費上昇で困窮するトラック運転手などに給付支援策を打ち出す方針です。ブラジル財政は歳出上限が定められていますが、これを22年度に限り緩和することで財源を捻出する動きとなったことなどから財政不安が台頭し、レアルの下押し要因となっています。
この背景は来年の大統領選挙と見られます。最近の世論調査を見ると、ボルソナロ大統領の支持率は25%程度と低水準である一方、不支持は5~6割程度です。一方、ライバルと見られるルラ元大統領の支持は5割程度とボルソナロ大統領が不利な情勢であることに大きな変化は見られません。
足元の投資フローを見ると、金融政策と高利回りからブラジル投資の動きも一部にあるようですが、財政拡大との微妙なバランスが求められるだけに注意は必要です。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジル、金融と財政の綱渡り』を参照)。
(2021年11月22日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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