中国に金融政策を活用する兆し (※写真はイメージです/PIXTA)

中国景気は21年後半から減速感が強まっています。これに対し中国で主要な金融政策の1つである預金準備率は7月から据置かれています。人民銀は通常の金融政策の実施や全面的な刺激策を控え、的を絞った対応策を維持することなどを方針としてきたからです。ただ、このまま、従来通りの政策を維持するかは不透明で、何らかの見直しの動きも考えられそうです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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中国人民銀行:金融政策報告書で通常の金融政策からの変化を示唆か?

中国人民銀行(中央銀行)は、2021年11月19日に最新の四半期金融政策報告書(報告書)を発表しました。

 

人民銀は今回の報告書では「通常の金融政策を堅持する」といった表現を削除しました。中国の景気回復に減速感が漂う中であっても人民銀は預金準備率を維持、明確な金融緩和姿勢を示しませんでした(図表1参照)。今後の人民銀の対応に注目が集まりそうです。

 

日次、期間:2016年11月23日~2021年11月23日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国の主な預金準備率の推移 日次、期間:2016年11月23日~2021年11月23日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:金融政策報告書、預金準備率、生産者物価

中国景気は21年後半から減速感が強まっています。これに対し中国で主要な金融政策の1つである預金準備率は7月から据置かれています。人民銀は通常の金融政策の実施や全面的な刺激策を控え、的を絞った対応策を維持することなどを方針としてきたからです。ただ、このまま、従来通りの政策を維持するかは不透明で、何らかの見直しの動きも考えられそうです。

 

まず、中国の経済成長率を確認します。21年を通した成長率は8%程度が予想されています。中国政府が示した21年の成長目標6%を上回る数字です。しかし成長率の中身を見ると、1-3月期の前年比18.3%に押し上げられた結果と見られます。市場では10-12月期の成長率は3%台と、中国としては低い成長率を予想しています。

 

また、22年の成長率予想を見ると、大幅な回復を市場は見込んでいない状況です。不動産をはじめとした規制強化、ゼロ・コロナ政策(新型コロナウイルスの感染拡大に対応する厳格な経済封鎖)など今年の中国の成長率の下押し要因の影響は当面残ると見られます。加えて、仕入れ価格を概ね代替する生産者物価が高水準な一方で、販売価格を代替する消費者物価指数は低水準であるため企業利益の縮小が懸念されます。先日、人民銀の貨幣政策委員会の劉世錦委員はこの状況が続けば中国経済が準スタグフレーション局面に入る可能性があると警告しています。

 

次に人民銀の主な政策を振り返ると、まず、中国では主要な金融政策である預金準備率は今年7月15日(公表は9日)の引き下げから据置かれています。7月の預金準備率引き下げは0.5%で、引き下げ後の中国金融機関の加重平均による預金準備率は8.9%となりました。主要銀行には引き下げ余地が残りますが、中小企業への融資を優先する銀行の預金準備率は相対的に既に低く、今後の引き下げ余地が若干少ない点に注意は必要です。

 

こうした中、四半期金融政策報告書(7-9月期)では、マネーサプライの適切な管理(水準を抑えるという意味と思われる)や、景気刺激策を控えると言った表現も削除されており何らかの金融政策を検討している可能性がありそうです。

 

その候補としては預金準備率の引き下げが考えられます。

 

なお、為替については足元、人民元高傾向となっています(図表2参照)。ただ輸入物価の上昇につながる極端な人民元安にはマイナス要因も多いことから、人民元安誘導ではなく金融緩和による自然な人民元安にとどめると思われます。

 

日次、期間:2020年11月24日~2021年11月24日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国人民元(対ドル)レートの推移 日次、期間:2020年11月24日~2021年11月24日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

最後に、人民銀は量的金融緩和には消極的であると見られます。人民銀の総裁、並びに副総裁が行った最近の講演で量的金融緩和は市場機能の回復など限られた状況において使用する最終手段であって、通常の金融政策として活用することに消極的であると表明しています。

 

中国の景気減速が進むにつれて、何らかの金融政策を活用する兆しが増えはじめたたように思われます。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国に金融政策を活用する兆し』を参照)。

 

(2021年11月24日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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