(※写真はイメージです/PIXTA)

うつ病に対して、患者や周囲の人は「本人のやる気や身体的な問題にあるのではないか?」と考えてしまいがちです。しかし療養においては、病気について正しいイメージをもって向き合うことが非常に重要。ここでは、うつ病の方はどんな状態に陥っているのか、そして療養生活で自己治癒力を促進・阻害するものにはどのようなものが挙げられるか、医療法人瑞枝会クリニック・院長の小椋哲氏が解説していきます。

「自己治癒力」はどうしたら高まるのか?

ちょっとしたケガで出血しても数日経てば傷がなくなっているように、うつ病も自分で治す力があることを患者自身に理解してもらう。これを知ることが、チェーンをかけ直すための第一歩です。

 

自己治癒力を発揮させるためには何をすればよいのか。総論的にまとめると、療養環境のなかに、自己治癒力を促進するものをたくさん用意し、それを阻害するものをできるだけ取り除いていく、ということになります。具体的な内容は、[図表]のとおりです。

 

[図表]うつ病の療養生活で自己治癒力を促進 ・ 阻害するもの

 

なんとか「外れたチェーンをかけ直す」ことができたら、このタイミングで多くの人が、「早く元のようにスイスイ自転車をこぎたい」と考えて、いきなり自転車にまたがってこぎ出そうとします。

 

しかし、この段階で無理にペダルを踏むと、またすぐにチェーンが外れてしまうおそれがあるということも患者に伝えます。

 

せっかく自己治癒力で回復させた脳の機能がまた振り出しに戻ってしまい、一からやり直すことを余儀なくされてしまうからです。結局、焦ると余計に時間がかかることになるので、順調な回復を目指すなら、こうした無駄を回避することがポイントです。

 

とはいえ、実際にペダルを踏み始めないことには、本当にチェーンがかかっているか分からない、という現実もあります。ですから、療養はどの程度チェーンが回復しているかを、ペダルを踏んで確かめながら進める姿勢が不可欠です。

 

この場合、実際にペダルを踏むとは、「毎日の生活のなかで取るすべての行動」を意味します。まさに、毎日の生活そのものがリハビリといえます。

 

うつ病の症状が重いときは、顔を洗うことすらできないので、こうした状態のときに無理に入浴や散歩をすると症状が悪化する場合があります。これが「無理をしたためにチェーンがまた外れてしまった」状態で、入浴や散歩は、この時点では無理なペダルの踏み方だった、ということになります。

 

具体的には、次のような順番で、患者がペダルを踏み込んでいくように療養を進めることができれば理想です。

次ページ自宅内・外での「ペダルを踏み込んでいく段階」具体例

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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