(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の高齢男性が亡くなり、遺族は遺産分割と相続税の納付の件で頭を悩ませていました。すると、見知らぬ女性が亡き男性の自筆の遺言書を携え、やってきました。そこに書かれていた内容は「全財産をこの女性に贈与する」というもの。果たして法的な効果はあるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

手書きの遺言は、日付の記載と署名捺印があれば有効

遺言には公正証書遺言と自筆証書遺言があります。公正証書や公証役場で公証人に作成してもらう遺言で、ワープロ打ちで作成されています。自筆証書遺言は、遺言者が全文自筆で書いて作成する遺言で、日付が書かれており、署名捺印があります。

 

したがって、手書きの遺言は、日付が書かれており、署名捺印がなされていれば有効となります。むしろ、自筆証書遺言は自筆(手書き)でないと無効になります。

 

よって、まず、手書きの遺言は無効だとする選択肢①は誤りです。

 

次に、愛人に対する遺言は、有効でしょうか。

 

愛人に対してだろうが、誰に対してだろうが、遺言の要件を満たしていれば遺言は有効のように思えます。

 

しかし、既婚者の男性が妻以外の女性と深い関係になり、その対価を支払う契約を愛人契約といいますが、愛人契約は公序良俗に反して無効とされています。

 

とすると、愛人に対する遺言も無効とされるようにも思えます。

愛人への遺言が、最高裁まで争われたケース

しかし、この愛人に対する遺言のケースが、最高裁まで争われたことがあるのです。

 

最高裁は、遺言書が愛人との関係の維持目的に作成された場合は無効であるけれども、愛人の生活を守るために作成されたもので、ほかの相続人の生活の基盤を脅かすようなものではなければ有効であると判断し、当該ケースでは、愛人に対する遺言を有効としました。

 

すなわち、愛人に対する遺言は、常に無効となるとも、常に有効となるとも判断せず、事情によっては有効となり、事情によっては無効となると判断したのです。

 

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