入居者3人「介護包括型グループホーム」の収支例
では、実際に規模の小さなグループホームの収支がどうなっているのか、数字を見てみます。
※地域単価10円の富山県の場合。地域単価とは、もともと定められている報酬単位というものに地域単価をかけて金額を出すものです
このグループホームは定員3人(個室が3つ)の介護包括型グループホームです。包括型なので短期入所のための部屋はありません。また、既存建物を使用し、ローン等の返済はないものとします。
表の1~4まで…収入の部
1.基本支援金の額です。このホームには障がい支援区分2の人が3人入居しています。
区分2の1日あたりの支援費単価は2920円(世話人配置4:1の場合)。この月の稼働日数が30日とすると利用額は26万2800円となります。
2.基本支援金に加算される部分を計算します。一定の資格をもつ人員を配置している、もしくは常勤職員の割合が一定以上の場合、福祉専門職員配置等加算が加算されます。
1日40円×入居者3人×稼働日数30日=3600円……①
また、本来、包括型グループホームには夜間人員の配置は求められていないのですが、夜勤を配置した場合「夜間支援等体制加算額Ⅰ」が加算されます。
1日2990円×入居者3人×稼働日数30日=26万9100円……②
加算額の総額は①+②=27万2700円
さらに「処遇改善加算Ⅰ」の3万9627円が加算されます。処遇改善加算とは、従業者にキャリアアップのために資格取得の勉強をさせるなどをした場合に加算されるものです。
合計金額は31万2327円となりました。
3.短期入所はないので、0円とします。
4.入居者から支払われる金額です。
家賃1万5000円+管理費1万800円+食費2万1600円=4万7400円
3人分として14万2200円となります。
※新築なら家賃は4万円前後になりますが、今回は中古改修で空き家をそのまま使うので家賃は1万5000円に設定
1~4をトータルした結果、総収入は71万7327円ということが分かりました。
表の5~6まで…支出の部
5.人件費を見ます。
この施設では管理者がサービス管理責任者を兼務しており、サービス管理責任者としての給与が
1時間あたり1800円×160時間=28万8000円
世話人の給与が
1時間あたり950円×約64.6時間=6万1343円
夜勤者の給与が
1時間あたり1188円×約210時間=24万9375円
トータルすると59万8718円となります。
これに13%の福利厚生費がかかるとして
59万8718円×0.13=7万7833円
人件費合計額は67万6551円です。
総収入に対する人件費率は
67万6551円÷71万7327円≒0.943
94.3%となります。
この94.3%というのが大問題です。
人件費率は6割未満というのが基本的な採算ベースになってくるので、ここまで人件費が高いと事業としては成り立っていないといわざるを得ません。
6.損益通算をしてみましょう。
総収入71万7327円−人件費67万6551円−その他固定費3万3000円−その他変動費9万7200円=マイナス8万9424円
最終的な損益は月額マイナス8万9424円ということが分かりました。年額にするとマイナス107万3088円です。
「障がい者グループホームは利益が出ない」といわれても当然の金額です。
なぜこのようなことになるのかというと、それは「規模が小さすぎるから」です。
では、規模が大きくなったらどうなるのか。次回は、新築の介護包括型グループホーム(定員10人)をモデルとして試算してみたいと思います。
岩崎 弥一
アルカスコーポレーション株式会社 代表取締役
南砺市商工会 副会長
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