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「福祉を楯に悪いことをしようとしているんじゃ…」
町内会長への挨拶をすませ、2回目の住民説明会を行うことになりました。参加者は、前回の8人から17人へと2倍以上になりました。1回目は障がい者グループホーム建設予定地の班の方だけを対象としていたのですが、「町内会全体にも声を掛けた」というのがその理由です。
参加者が多くなった分、以前とは違う質問が寄せられました。
1回目は治安がどうなのか、運営の体制がよく見えないというところを突かれたのですが、2回目は、「よく分からないゼネコンが、ペーパーカンパニーをつくって福祉を楯に悪いことをしようとしているんじゃないか。ちゃんと入居者ファーストでやる気はあるのか」と言われたのです。
これに対しては、そもそも入居者に入居していただき、お世話をすることでお金を払ってもらうビジネスモデルなので、入居者がいないと成り立たず、その点では間違いなく入居者ファーストである旨、お話ししました。
運営がずさんで入居者がどんどん出て行ってしまわれたら、ビジネスとして成り立ちません。
ボランティアでは続かない、との説明に「分かった」
「営利目的で福祉をやるのは間違っているんじゃないか」という問いに対しては、私たちが日ごろよく口にしている「利益が伴わなければ長続きせず、最終的には支援を必要としている障がい者の方々が困ることになる」という説明をしました。利益を度外視することなどもってのほかです。ボランティアでは続かないと訴えたところ「そうか、分かった」という反応でした。
また、ペーパーカンパニー云々については、そんなことはなく本気で福祉事業をやりたいと思っていること、別会社にしたのは将来的にA型の就労継続支援事業所をやるため、福祉事業の専門会社である必要があることをお話しさせていただきました。
説得力があったのは、就労支援事業所の所長の「皆さんは障がいのある人に会ったことがないからイメージが湧かないのでしょう。でも彼らは私たちとなにも変わりません。同じような生活をしています」という言葉と、それを裏付けるインタビュー動画でした。
私たちの質問に対して「土日はゲーセンに遊びに行きます」「家でゆっくり過ごすことが多いです」「いまはコロナで行けませんが、コロナ前は東京ドームに野球を見に行くのが楽しみでした。野球が大好きなので」などと答える姿を見て、「自分たちと変わらない」という思いを強くしてくれたようです。
「彼らは本質的に私たちとなにも変わりません」
2回目の説明会に参加されていた方全員が、心から障がい者グループホーム建設を受け入れたかどうかは分かりません。ただ、表面上はなんとか納得してもらえたといっていいのではないかと思います。
その要因となったのは、やはり就労支援事業所の所長にご登場いただいたことです。所長はいわば中立の第三者です。この存在は極めて大きかったです。
結局、自分たちと相手だけだと完全に対立構造が生まれてしまいます。私たちがどんなに「大丈夫です」と言っても、「いや、そんなはずはない」「適当なことを言ってごまかすな」と返してきます。しかし第三者が入ることによって、聞く耳をもち始めたという印象でした。
長く障がい者福祉事業に携わり、日ごろから障がいのある人たちと関わってきた所長の「彼らは本質的に私たちとなにも変わりません」という言葉は、非常に説得力がありました。
成功に終わったといえる住民説明会ですが、いま、振り返って思うのは、できれば説明会はやらないスタンスでいくべきだということです。
人数が増えれば増えるほど反対意見が強くなりますし、それを説き伏せるには多大なエネルギーが必要です。本来、割くべきところに割くはずのエネルギーを、ほかのところで使うことになってしまいます。
もちろん本事業を多くの方に理解・支援していただくのは大切なことです。だからこそ、団体を相手にするのではなく、町内会長の事後報告にするのが原則だと痛感させられました。町内会長から「こういう建物が建つことになりました。事業者が『質問のある人は直接お尋ねください』と言っています。必要があれば一軒一軒訪ねて説明してくれるそうです」と言ってもらうのがいいのではないかと思います。
これから新たに障がい者グループホームを建てるときは、そういう方式にするつもりです。
次回は、着工から募集に至るまでと、さらに就業規則作成について解説します。
岩崎 弥一
アルカスコーポレーション株式会社 代表取締役
南砺市商工会 副会長
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