(※写真はイメージです/PIXTA)

「寝つきを良くするためにアルコールを飲んでいる」という患者がいれば、精神科医・臨床心理士はうつ病の症状悪化を懸念して真っ先に介入しなければなりません。しかし、「5分診療」が主流となり、医師と臨床心理士の連携が進んでいない現状では、難しい実態があるようです。医療法人瑞枝会クリニック・院長の小椋哲氏が解説します。

「寝つきを良くするためのアルコール」が危険なワケ

例えば、Aさんは、「寝つきが悪い」「寝つきを良くするためにアルコールを飲んでいる」と担当の臨床心理士に話しています。

 

うつ病の症状が悪化する背景には、睡眠の問題が影響しているケースも多くあります。アルコールは明らかに睡眠の質を落とすので、これは真っ先に介入しなければならない習慣です。

 

Aさんの場合は、睡眠薬を処方して十分な睡眠を確保できるようになれば、今よりも症状が改善する可能性もあります。臨床心理士に薬の処方はできませんが、医師に患者の睡眠についての情報を提供して介入を促す必要があったのです。

医師と地域スタッフとの連携や役割分担の実態

ただ、臨床心理士によって得意分野が異なるのは、仕方のないことです。本来は精神科医がなるべく多くのフレームでその患者を観察し、どんな治療のアプローチが適しているかを判断する必要があります。

 

それが特定のカウンセリング手法であるなら、それを得意とする臨床心理士を紹介することで、適切な対人援助ができる可能性は高まります。

 

しかし、精神科医の多くは精神療法に精通していないため、こうした役割を果たすことができていません。患者の症状に合っているかどうかは分からないけれど、とりあえずクリニックに在籍している、あるいは提携している臨床心理士につないでいるだけなのです。

 

医師と臨床心理士が連携し、それぞれが不足しているスキルを共有したうえで切磋琢磨する関係ができていればよいのですが、現実は患者の症状が改善しなかったり長期化したりしても、責任の所在はあいまいなまま、なれ合いになっている場合が多いと感じます。

 

医師との連携が求められるのは臨床心理士だけではありません。精神科ユーザーには、就労や復職などに向けてのデイケアなどのリハビリテーションも不可欠です。

 

精神科ユーザーが利用する可能性のある、デイケア・訪問看護ステーション・薬局などの医療機関、就労移行支援事業所・作業所などの福祉施設、地域支援センターなどの行政機関を、地域に点在する利用可能な資源という意味で、地域リソースと総称しています。

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※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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