「寝つきを良くするためのアルコール」が危険なワケ
例えば、Aさんは、「寝つきが悪い」「寝つきを良くするためにアルコールを飲んでいる」と担当の臨床心理士に話しています。
うつ病の症状が悪化する背景には、睡眠の問題が影響しているケースも多くあります。アルコールは明らかに睡眠の質を落とすので、これは真っ先に介入しなければならない習慣です。
Aさんの場合は、睡眠薬を処方して十分な睡眠を確保できるようになれば、今よりも症状が改善する可能性もあります。臨床心理士に薬の処方はできませんが、医師に患者の睡眠についての情報を提供して介入を促す必要があったのです。
医師と地域スタッフとの連携や役割分担の実態
ただ、臨床心理士によって得意分野が異なるのは、仕方のないことです。本来は精神科医がなるべく多くのフレームでその患者を観察し、どんな治療のアプローチが適しているかを判断する必要があります。
それが特定のカウンセリング手法であるなら、それを得意とする臨床心理士を紹介することで、適切な対人援助ができる可能性は高まります。
しかし、精神科医の多くは精神療法に精通していないため、こうした役割を果たすことができていません。患者の症状に合っているかどうかは分からないけれど、とりあえずクリニックに在籍している、あるいは提携している臨床心理士につないでいるだけなのです。
医師と臨床心理士が連携し、それぞれが不足しているスキルを共有したうえで切磋琢磨する関係ができていればよいのですが、現実は患者の症状が改善しなかったり長期化したりしても、責任の所在はあいまいなまま、なれ合いになっている場合が多いと感じます。
医師との連携が求められるのは臨床心理士だけではありません。精神科ユーザーには、就労や復職などに向けてのデイケアなどのリハビリテーションも不可欠です。
精神科ユーザーが利用する可能性のある、デイケア・訪問看護ステーション・薬局などの医療機関、就労移行支援事業所・作業所などの福祉施設、地域支援センターなどの行政機関を、地域に点在する利用可能な資源という意味で、地域リソースと総称しています。