(※写真はイメージです/PIXTA)

建物の建て替え等で借地人に立ち退きを依頼する際、地主は借地人に立退料を支払うことになる場合があります。この「立退料」とは、どのように算出されるものなのでしょうか。今回は、賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

立退料は借地人の事情を加味したうえで算出される

このようなケースで、裁判所はどのように立退料を算定するのでしょうか。

 

この裁判例では、裁判所は、以下の根拠で立退料を2000万円と判断しました。

 

まず、この裁判では、裁判所の選任した不動産鑑定士により借地権価格が1820万円と算定されています。

 

この結果を踏まえて、裁判所は、「自己使用の必要性等の状況いかんによっては、借地権価格の一部の補償をもって足りることもあり得る」といいつつも、

 

「本件においては、借地人側の事情を最大限考慮し、借地権価格の全額を補償するに足りる立退料の支払が必要であると解すべきである。」

 

と述べて、まず借地権価格を立退料の前提としました。

 

上記に加えて、

 

「本件建物の補償についても立退料に反映させるのが適当であると解される」といいつつも、

 

「本件建物は昭和45年11月に建築された築42年の木造家屋であり、建物自体の客観的価値に大きな評価を与えることは困難である。また、本件建物に設置されている製麺機、そば釜、業務用クーラー等は、設置時の価格はともかく、現在は既に減価償却も終わっていると推認されるものであって、残存価値はあってもわずかなものと解される。」

 

と述べて、建物の価格はそれほど評価しないとの判断をしました。

 

以上を踏まえて、裁判所は、

 

「以上認定の本件土地の借地権、本件建物及びうどん店の設備類の補償の要素に加え、うどん店の営業補償、本件建物からの移転に要する諸費用(引越費用、新たな住居を借りるための礼金、仲介手数料等)等の要素を全て考慮の上、本件において正当事由を補完するために必要な立退料の額は2000万円と認めるのが相当である。」

 

と判断しました。

 

この裁判例から読み取れることは、

 

・不動産鑑定により算出された借地権価格を基準として、(主に)借地人側の契約継続の必要性が高ければ、借地権価格を全額立退料の基礎とする

・借地上建物や設備の客観的価値があれば考慮する

・その他、周辺事情として引越費用の諸費用、(借地人が事業者の場合は)営業補償も加味する

 

という要素で借地の立退料が算定される、ということになります。

 

本件は、裁判における借地の立退料の一つの算定事例として参考になるものとみられます。

 

※この記事は2020年1月22日時点の情報に基づいて書かれています。

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

 

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