立退料は借地人の事情を加味したうえで算出される
このようなケースで、裁判所はどのように立退料を算定するのでしょうか。
この裁判例では、裁判所は、以下の根拠で立退料を2000万円と判断しました。
まず、この裁判では、裁判所の選任した不動産鑑定士により借地権価格が1820万円と算定されています。
この結果を踏まえて、裁判所は、「自己使用の必要性等の状況いかんによっては、借地権価格の一部の補償をもって足りることもあり得る」といいつつも、
「本件においては、借地人側の事情を最大限考慮し、借地権価格の全額を補償するに足りる立退料の支払が必要であると解すべきである。」
と述べて、まず借地権価格を立退料の前提としました。
上記に加えて、
「本件建物の補償についても立退料に反映させるのが適当であると解される」といいつつも、
「本件建物は昭和45年11月に建築された築42年の木造家屋であり、建物自体の客観的価値に大きな評価を与えることは困難である。また、本件建物に設置されている製麺機、そば釜、業務用クーラー等は、設置時の価格はともかく、現在は既に減価償却も終わっていると推認されるものであって、残存価値はあってもわずかなものと解される。」
と述べて、建物の価格はそれほど評価しないとの判断をしました。
以上を踏まえて、裁判所は、
と判断しました。
この裁判例から読み取れることは、
・借地上建物や設備の客観的価値があれば考慮する
・その他、周辺事情として引越費用の諸費用、(借地人が事業者の場合は)営業補償も加味する
という要素で借地の立退料が算定される、ということになります。
本件は、裁判における借地の立退料の一つの算定事例として参考になるものとみられます。
※この記事は2020年1月22日時点の情報に基づいて書かれています。
北村 亮典
弁護士
こすぎ法律事務所
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