「自分がもっと先を見通せていたら…」主治医の後悔
しかし病院から自宅へ帰る介護タクシーの車内で、その甘い考えは完全に否定されてしまいました。Eさんは吸引がなければ気道の小さな痰でさえ出せなかったのです。この状態で家に帰ることは「死」を意味します。Eさんを何とか自宅に運び込み、本人、奧さん、娘さんに現状を説明し、このままでは死に至ることを訴えました。
「今自宅に到着したばかりですが、今すぐにでも病院に引き返して、人工呼吸器を着けませんか? そうすれば生命は救えます!!」と訴えました。
しかしその答えは「人工呼吸器は装着しない」でした。
Eさんは長い長い夜の中で、いつものように考えに考え、この結論を出したことを私は悟りました。Eさんはその日の夕方、家族に見守られながら旅立ちました。主治医がもっと先を見通せていたら、もう少し決定に関して時間的余裕を持てたのでは……という後悔でいっぱいです。
*****************************
矢野 博文
1957年7月徳島市生まれ。1982年川崎医科大学を卒業。以後病院で麻酔科医として勤務。2005年3月よりたんぽぽクリニックで在宅医療に取り組む。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】