(※写真はイメージです/PIXTA)

金融市場にカネ余りの状態が起こっていることから、先進国の金利はほぼゼロかマイナス圏で推移しており、コロナ禍で米国債金利も低下し、実質金利(名目金利からインフレ分を控除)もマイナスとなっており、米国債券投資は実質“損する”という状態に陥っています。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

銀行システムは不可欠な社会インフラ

では銀行・生保などの金融業界を支えるために、今後日銀など中央銀行が、金利上昇を容認することはあるでしょうか? それは同時に、中銀がこれまで緩和政策を通じて購入した国債などの債券資産の低下を意味しますし、金利上昇を通じた社会全体の貸出量の低下が見込まれ、景気をもっと冷ます要因とも考えられます。

 

要するに金利上下させるにも、中銀の政策は経済全体や金融業界へかなりのインパクトがある、と考えますし、長期的な方向性としては、中銀が金利上昇姿勢へ戻る、といった展開には、世界全体で景気のオーバーヒートが止まらない、というような状態でない限り、とても想像しにくいと思います。

 

また欧米の銀行は、2008年のリーマン・ショックの教訓から、銀行自体があまりリスクを取った経営をしないように、大手の国際銀行には資本規制が強化されました。また中銀による低金利で、銀行業務としての利ザヤという収益源に縮小圧力がかかっており、十数年ほど収益性が低下していました。そのことから、預金と貸出、また決済を中心とする伝統的な銀行業は斜陽産業のように見られていました。

 

しかしコロナショックにおける突然の資金需要に、民間銀行が中銀による流動性供給の現場窓口となり、実体経済に資金供給を行い、緊急時対応を取れていた、という見方から、米国や欧州等の主要先進国では銀行システムが不可欠の社会インフラであることを再認識させた、とも言われています。『いざ』というときには、中小企業や家計も銀行に頼るしかない、という現状は時代が経っても、変わっていないようです。

 

米国で対策の柱となった米連邦準備理事会(FRB)のメインストリート融資プログラムでも、銀行は仲介役に位置付けられています。皮肉的ですが、その結果銀行勢は決算時に、倒産し貸出が回収できないという確率を含めた多くの貸倒引当金を積む必要が出てきて、元々収益性が落ちていた銀行ビジネスを一時的にさらに赤字にさせた、という側面もあります。

 

たとえ今後コロナ禍を乗り越え、世界全体として景気回復へと転じたとしても、日本も含めた先進国の銀行の業績見込みは、芳しくないことに何の変化もない、とも言われています。またECBのルイス・デ・ギンドス副総裁がスピーチ(BuildingtheFinancialSystemofthe21stCentury)でこのように発言されていました。

 

「銀行セクターはパンデミックのストレスの中でも、頑健であることを示せた。しかし、それは将来にわたり逆風を受けないということではない。収益性の低下という構造問題も抱え続けている。…収益源の多角化などが、将来に向けた方向性だ」

 

 

後藤 康之
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
国際公認投資アナリスト(CIIA)

 

 

最強の外資系資産運用術

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