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1.はじめに
近年の旺盛なオフィス需要を支えていた要因の1つに、「レンタルオフィス※1」や「シェアオフィス※2」、「コワーキングスペース※3」等のサードプレイスオフィスの増加が挙げられる。企業は、「働き方改革」の一環として、従業員の働きやすい職場環境を提供しワークライフバランスの向上を図るため、サードプレイスオフィスの利用を拡大していた。
※1 会議室などを共用部分に設置して共有し、専用の個室をそれぞれ持つ、いわば合同事務所のようなオフィス形態。
※2 フリーアドレスでデスクを共有して利用するオフィス形態。
※3 オープンなワークスペースを共用し、各自が自分の仕事をしながらも、自由にコミュニケーションを図ることで情報や知見を共有し、協業パートナーを見つけ、互いに貢献しあう「ワーキング・コミュニティ」の概念およびそのスペース(コワーキング協同組合による定義)。
新型コロナウィルス感染拡大後は、通勤時間の削減や、執務環境が整っておらず自宅でのテレワークが困難等の理由から、自宅近くのサードプレイスオフィスを利用する人が増えている。
こうした背景を踏まえ、今後の成長が期待できるサードプレイスオフィス事業への新規参入が相次いでいる。[図表1]は、サードプレイスオフィス事業への新規参入事例をピックアップしたものである。近年では、不動産業以外の他業種からの進出が目立つ。2019年に「東京電力」が、2020年に紳士服販売の「青山商事」、2021年に情報サービス業の「サイバーエージェント」等が、サードプレイスオフィス事業に参入した。
コロナ禍以降、全国的にオフィス需要が停滞し空室率の上昇が続くなか、オフィス市場におけるサードプレイスオフィスの存在感が一段と高まっている。そこで、本稿では、サードプレイスオフィスの現状について概観した上で、今後、オフィス市場に及ぼす影響について考えたい。
2.首都圏におけるサードプレイスオフィスの現況
(1)サードプレイスオフィスの拠点分布
[図表2]は、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に所在する主なサードプレイスオフィスを地図上にプロットしたものである。もともと、サードプレイスオフィスは東京駅から半径10キロ以内の都心部に集積し、なかでも東京駅や渋谷駅、新宿駅等の都心ターミナル駅周辺での開設が多くみられた。