(2)サードプレイスオフィスが入居しているオフィスビルの属性
サードプレイスオフィスが入居するオフィスビルを規模別(延床面積)※1に確認すると、小型ビルが33%、中型ビルが32%となり、中小型ビルで全体の約3分の2を占めた[図表3左図]。また、エリア別にみると、「東京都心5区※2」においても中小型ビルの割合(63%)が高い一方で、超大型ビルの割合が15%となり一定数の拠点が開設されている※3。
※1 小型ビル;延床面積1,000㎡未満、中型ビル;延床面積1,000㎡以上5,000㎡未満、大型ビル;延床面積5,000㎡以上30,000㎡未満、超大型ビル;延床面積30,000㎡以上
※2 「東京都心5区」(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)、「郊外」(東京周辺18区、神奈川県、埼玉県、千葉県)
※3 三井不動産「ワークスタイリング東京ミッドタウン日比谷」、WeWork「WeWork渋谷スクランブルスクエア」、等。
次に、入居ビルの築年数を確認すると、「30年以上40年未満」(28%)が最も多く、次いで「20年以上30年未満」(21%)となり、「5年未満」の割合は15%にとどまる。また、「東京都心5区」では「40年以上(旧耐震基準)」の築古ビルが約4分の1を占める[図表3右図]。
超大型の新築ビルにサードプレイスオフィスの拠点を開設する事例が多く報じられているが、実際には築年数が経過した小型ビルを拠点とするケースも多いようだ。
(3)サードプレイスオフィスの提供サービス内容
続いて、サードプレイスオフィスの拠点面積を確認すると、「25坪未満」(41%)が最も多く、次いで「25坪以上~50坪未満」(23%)となり、50坪未満の小規模拠点が7割弱を占める[図表4]。
また、エリア別にみると、「郊外」では「25坪未満」(51%)の小規模拠点が半数を超える一方で、「東京都心5区」では「500坪以上」(13%)の大規模拠点も一定数確認することができる。
また、月額利用料金(最安料金)について確認すると、「1万円以上2万円未満」(43%)が最も多く、次いで「2万円以上3万円未満」(19%)となっている。エリア別では、「東京都心5区」は高額料金帯「4万円以上」(19%)が約2割を占める一方で、「郊外」は、低額料金帯「1万円未満」(24%)が約4分の1を占める[図表5]。
国土交通省「テレワーク人口実態調査」によれば、「共同利用型オフィス等の希望利用料金」は、「自己負担が必要なら利用しない(39%)」との回答が最も多く、「月額1,000円未満(21%)」、「月額1,000~4,999円(20%)」の回答も多い[図表6]。そのため、オフィスワーカーによる利用は、現状、法人契約や企業からの補助金の活用が中心と考えられる。
サードプレイスオフィスは、利用者が月極契約によりスペースを日常的に利用するサービスのほか、1日または時間単位で利用料を支払い、一時利用するサービス(「ドロップイン」)※がある。
※ 一般財団法人 大都市政策研究機構 「日本のコワーキングスペースの現状と展開」調査研究レポート、2019年12月23日
ザイマックス不動産総合研究所「働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査(2021 年7月)」によれば、サテライトオフィスの利用方針は、「タッチダウン(移動の合間など、短時間利用)で働く場所(67%)」との回答が最も多く、「ドロップイン」サービスの利用ニーズがかなり高いことが窺える[図表7]。「ドロップイン」サービスを展開している拠点は、「全体」では53%、「東京都心5区」では44%、「郊外」では62%を占める[図表8]。
また、ザイマックス不動産総合研究所「首都圏オフィスワーカー調査 2020」によれば、サテライトオフィスを利用する際に重視する条件は、「自宅から近い(63%)」との回答が最も多く、次いで「Wi-Fi等の通信設備(41%)」、「業務に集中できる個室がある(32%)」が多い[図表9]。
直近では、新型コロナウィルス感染防止の観点から、不特定多数の利用者が出入りし、人との接触機会が多いオープンスペースの活用を控え、「個室」の利用ニーズが高まっている。「個室」を有する拠点は、「全体」では80%、「東京都心5区」では85%、「郊外」では74%を占めている[図表10]。
サードプレイスオフィスは、スタートアップ企業やフリーランスによる利用も多い。こうした背景から単なるスペース貸しだけでなく、一定の起業・就業支援を志向し、サードプレイスオフィスの住所を法人登記できるサービスを提供する拠点も多い。法人登記サービスを提供する拠点は、「全体」で60%、「東京都心5区」では68%に達している[図表11]。