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口座数、買付額とも順調に増加中
2018年1月から始まった つみたてNISA(少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度)。直近、公表された2021年6月末時点での口座数(棒グラフ)は417万口座と400万口座を超えたことが明らかになった[図表1]。
2021年4-6月3カ月の増加数は56万口座と1-3月の59万口座を下回ったものの、引き続き新規開設が多かったといえよう。2021年に入って半年で115万口座の増加となり、2020年の年間口座増加数(113万口座)を上回った。
このままの勢いが維持されるならば下半期でも100万口座ほど増えて年末には500万口座を超えるかもしれない。
つみたてNISAからの買付額(線グラフ)も順調に増加しており、2021年4-6月の3カ月で1,600億円の買付があった。この半年で3,000億円に達している。
筆者は2020年12月末のデータが公表された時点で、急増した2020年10-12月の買付額から2021年は更に増えるものとして、2021年1年間のつみたてNISAからの買付額は1兆円を超え、1兆2,000億円から1兆5,000億円になるのではと予想していた。
しかし、残念ながら2020年10-12月の急増は、実際にはボーナス設定などを活用した年末駆け込みの買付だったようで、1兆円超えの予想は外れそうだが、このままいくと2021年1年間のつみたてNISAからの買付額は7,000億円前後にはなりそうである。
2021年も2020年と同様に10-12月に買付が急増するかもしれないが、それでも2021年の買付額は「年末500万口座」×「実際に活用される口座の割合7割」×「1口座あたり平均24万円」で8,400億円あたりが上限なのではないかと考えている。前提はあくまでも目安であり、前提においた3つの数値が実際には大きく上振れてくれることを願っている。
制度開始以降の対象投信の調子もよく
また、制度開始以降のつみたてNISA対象商品のパフォーマンスも総じて良いことが各種マスコミで報道されている。実際に筆者自身でも足元のつみたてNISA対象商品(ETFは除外、2018年時点で対象商品でなかったものを含む)を2018年1月から毎月初に3万3,333円買付を行った場合のシミュレーションを行ったところ、2021年9月末時点で評価額は150万円台から220万円台となった[図表2]。
どの対象商品を選んでも評価額は買付合計(投資元本)約150万円(=3万3,333円×45カ月)を上回っており、2018年からはじめていれば含み益を抱えている状況であることが分かる。
さらに対象商品を4つに分類分けしてみると、米国株式投信、外国株式投信(米国株式以外)、国内株式投信、様々な資産を組み込んだバランス型投信の順で2021年9月末時点では評価額が高い傾向があった。
特に外国株式投信と米国株式投信の一部では評価額が210万円、つまり60万円以上の含み益が出ており、収益率は40%を超えている。2018年以降、コロナ・ショックで急落することはあったものの、米国株式を中心に世界的に株価が上昇基調であったこともあり、かなりの利益を上げている投資家がいることがうかがえる結果である。
実際のところはどうなの?
ただし、つみたてNISAは利用者の多くが最近になって始めた方であり、2018年から買付を行うシミュレーションは絵に描いた餅とまでは言わないが、制度の利用状況とは大きく異なっている。2021年6月末時点で制度開始以降の買付金額が累計で1兆600億円と1兆円を超えたが、そのうち約半分の5,000億円は2020年10月以降の買付であることからも、そのことが分かる。
年末の値しかデータが取得できないためシミュレーションと期間が若干異なるが、2020年末時点でつみたてNISAで実際に得られた収益を2020年末残高(7,233億円)、3年間の売却額(694億円)、分配金(0.6億円)から推計する[図表3]。
この3つを合計すると7,927億円であり、2020年まで3年間の買付金額7,614億円と比較すると、313億円の利益(含み益を含む)が得られていたと考えられる。確かに制度全体でみて利益が2020年末時点で得られていた様子だが、収益率にすると単純な計算で3年間の累計でたった4%程度(=313億円/7,614億円)であった。
やはり、さきほどみたシミュレーションと制度全体でみたときの実際の状況は大きく異なるといえよう。しかも、買付金額の1割弱にあたる約700億円は既に売却されてしまっており、意外と短期に売却した方も多かった様子である。利益が出ていても、それ以上に売却されたため、残高が買付金額を下回っている。長期的な資産形成を目指すべき制度であるのに、非常にもったいないと思う。
つみたてNISAは確実に活用が広がってきてはいるが、制度開始から4年目と短い期間ということもあり、制度が資産形成の本当の助けになるようになるには、まだまだこれからといえそうである。
前山 裕亮
ニッセイ基礎研究所
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