しかし、最高裁昭和39年10月13日判決のケースでは、相続人が亡夫の養子であり家庭内不和のため離縁することに決定していたが、手続きをしないうちに夫が死亡してしまったこと、相続人は当該家屋を使用する差し迫った必要がないこと、他方、内縁の妻側は子どもが独立して生計を営むまで至っていないことから、重大な打撃を受けることなどの事情から、相続人が内縁の妻に対し立ち退きを請求することは、権利の濫用として許されないと判断しました。
また、判例の中には、内縁の夫と内縁の妻が同居していた内縁の夫所有の建物について、内縁の妻が死亡するまで無償で使用させる旨の使用貸借契約が黙示的に成立していたとして、立退きを認めなかったものもあります。
逆に、相続人が経済的状況から、相続人が建物に住む必要性があって、内縁の妻と一緒に住むのは難しいことから、内縁の妻に対する立退き請求を認めたものもあります。
以上のことから、「内縁の妻には相続権がないけれども、事情によっては、立ち退かせることができない場合がある」という選択肢③が正解となります。
内縁の妻と暮らしている方は、内縁の妻はそのまま住み続けることをできるようにするのか、住み続けられないとしたら生活費はどうするのかといったことについても、遺言書を書くなどして、自分亡きあとに残った内縁の妻と子どもが揉めないようにしておくことが必要です。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士
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