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不動産だけではない…広がる「リアル・アセット投資」
リアル・アセットとは、不動産、インフラストラクチャー、天然資源、森林、農地などの実物資産への投資です。従来は不動産投資が主流でしたが、投資対象も徐々に広がってきています。
リアル・アセットは、基金の投資ゴールの1つである実質価値の維持と、インカム確保が期待されています。
不動産の投資対象としては、オフィス、商業施設(ショッピングセンター等)、賃貸住宅、産業施設(物流等)の4つが主なものですが、他にも介護施設、ホテルなどがあります。
投資形態としては、株式(エクイティ)と債権(デット)への投資があり、通常は多数の物件に分散されたファンドへ投資します。ファンドの償還までの期間が決まっているクローズド・エンド型と継続的に解約が可能なオープン・エンド型があります。
また、不動産投資信託法に準拠したものがREITで、上場REITと私募REITがあります。前者は取引所に上場されており、適宜売買が可能です。後者は運用の自由度が高く、昨今国内で提供される私募REITはオープン・エンド型が主流となっており、定期的な換金が可能です。
運用スタイルは大きく分けて、コア、バリューアッド、オポチュニスティックの3つです。
コア型は大型の優良物件に投資して、主に安定的なインカム収入獲得を目的としており、借り入れ(レバレッジ)もないか低位です。
バリューアッド型は、インカム収入の確保とともに、リノベーションなどによって物件の価値を向上させる戦略です。借り入れはコア型よりも相対的に高位な水準になります。
オポチュニスティック型は開発案件や全面的リノベーション、用途変更などによって、主にキャピタル・ゲインの獲得を目指すものです。借り入れも高位な水準になることが多く、投資期間も比較的短めになります。
また、コア型とバリューアッド型の中間的なスタイルをコア・プラスと呼ぶこともあります。賃料や不動産価値はインフレに連動することが期待されています。
不動産価値の評価は一般的にキャッシュフロー割引モデルが用いられるために、割引率である金利リスクに影響されます。金利が上がれば不動産価値は減少し、下がれば上昇します。また、借り入れを行っている場合はレバレッジ・リスクもあります。そして、売買にともなう流動性リスクにも留意が必要です。
オープン・エンド型の私募REITは定期的な解約のタイミングがありますが、実際に物件の売却がともなう場合は、手元に資金が戻るまでにある程度の時間を要する可能性があります。
上場REITは、取引所で売買されるため、流動性リスクは低いのですが、その反面、価格変動が大きくなりがちです。
私募の基準価額は、鑑定評価をベースにしているため、名目的な価格変動は小さく見えます。また、種別によってもリスクが異なります。
オフィスは企業のテナント契約が長く続き、賃料であるキャッシュフローも安定的ですが、ホテルは日々の部屋の稼働率が大きく変動するため、キャッシュフローは相対的に不安定です。そのため、不動産投資をする場合にも、分散投資が基本で、地域、種別やスタイルを分散させます。
一般的には、コア型を保有しつつ、サテライト的に高リターンの期待できる種別やスタイルを組み合わせます。
ベンチマークは投資対象によって異なりますが、私募が中心であれば米国ではNCREIF、その他地域はMSCI/IPD、上場REITの場合は、指数ベンダーから市場インデックスが多数提供されています。